評価と治療

理学・作業療法士が知っておくべき横隔膜の解剖と評価・治療

 こんにちは。作業療法士の中野です。

 頚椎へのアプローチ、顎関節へのアプローチは姿勢改善を目的にした時、非常な重要なポイントである。

参考エントリー:

 姿勢の問題の多くは筋活動の問題に起因する。生活習慣や癖によって左右非対称で画一的な運動になり、筋のアライメントが崩れ運動が起こりにくくなる。

 ボクのように健常者を相手にしていても生活習慣による姿勢の問題を抱えるクライエントに沢山出会う。ってか、大半が問題を抱えている。

 現代病であるストレートネックを伴うと、必然的に胸椎の後彎が強くなり、運動性が低下する。胸椎が固い人多いよねぇ。高齢は円背の強い高齢者もそうだし、腹部の緊張が低い子ども達も将来的にそうなる。

 今回はその胸椎の固さを取り、より良い抗重力アライメントを獲得する為に必要な横隔膜の解剖と評価、治療の技術についてシェアしたいと思う。

横隔膜の解剖

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 横隔膜は胸腔にあるドーム状の骨格筋(横紋筋)で、横隔神経に支配される。

 起始は以下の通り。

  • 胸骨部:剣状突起
  • 肋骨部:第7~12肋骨・肋軟骨の内面
  • 腰椎部:L1~3にわたる内側脚および前縦靭帯

 停止は腱中心。

 横隔膜の上部に心臓、下部に肝臓が位置している。

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 横隔膜には「食道裂孔」「大動脈裂孔」「大静脈孔」があり、食道裂孔は迷走神経と食道を、大動脈裂孔は腹大動脈と胸管を、大静脈孔は下大静脈と右横隔神経の枝をそれぞれ通している。(下図参照)

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 横隔膜の一部は腰椎に起始を持ち、起始部で大腰筋の影響を相互に与えている。(下図参照)

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横隔膜の運動

 横隔膜は吸気時に下制し、胸郭を拡げることで胸腔内圧を下げる。そのことで、受動的に肺を収縮させている。

 下の動画は横隔膜の動きがとても分かりやすいのでご覧頂きたい。

 呼吸はほぼ無意識的に行うが、意識的に止めたり、過呼吸状態を作ったり、最大呼気・吸気に近い状態にまで持っていったりすることができるので、横隔膜は随意筋である。

 その横隔膜の上下運動にて肺を収縮させ呼吸が起こっている。この横隔膜の可動範囲こそそのまま呼吸量に影響し、呼吸状態を左右するのだ。

横隔膜が働きにくくなる原因とメカニズム

 横隔膜の役割は主に呼吸だが、胸郭運動全体や脊柱の抗重力伸展にも関わっている。呼吸器官に問題がなければ横隔膜の問題が生命維持に関わるレベルで影響を与えることはない。しかし、その問題は徐々に全身に影響を与えている。

 横隔膜は何故動きにくく、あるいは固くなるのだろうか。それは姿勢の影響が大きいと考えられる。頚椎や顎関節の問題と同じだが、デスクワークやスマホの使用頻度増加に伴い現代人の多くはストレートネックである。

画像引用元:CEMJ
画像引用元:CEMJ

 こうなると、肩甲骨は外転位となり、肩関節の位置は前方へ偏位する。胸郭は腹腔へ落ち込み呼吸時の胸郭の運動範囲は減少する。呼吸は横隔膜の上下動に伴い胸郭が上下・左右に拡がることで起こるわけだが、その範囲が姿勢の問題で減少すると、その中身(横隔膜)の動きも減少するという論理だ。

 最近流行りの「横隔膜ストレッチ」で肩こりが改善するなんて言われているが、姿勢が改善されるわけだから当然ちゃ当然。ただ、姿勢が改善したからといって固くなり動きが減少していた横隔膜が急に動き始めるわけではないからあえて動かしてやる必要があるのだ。

横隔膜の問題による全身への影響

 横隔膜に問題があると当然呼吸に影響があるのだが、ここでは呼吸以外の話。

 既に述べている通り、横隔膜は抗重力筋の一つを担っている。横隔膜の運動性が乏しいと抗重力伸展に影響が出る。また、反対に抗重力に問題を抱えていると横画の運動性にも問題が現れる。つまり、横隔膜の問題は姿勢の問題となるのだ。

 また、これまた既に述べた通り横隔膜は腰椎で大腰筋と接している。横隔膜の固さと大腰筋の固さはリンクするのだ。大腰筋は腸腰筋(大腰筋+腸骨筋)を構成し、効率の良い歩行や姿勢保持に影響があるし、骨盤のアライメントを整える上でも重要な働きを与える筋肉である。

 横隔膜の問題は大腰筋に影響するし、大腰筋の問題も横隔膜に影響する。骨盤を中間位に保ち、抗重力伸展を促通するには横隔膜も大腰筋も働いていないといけない。

 つまり横隔膜の問題は姿勢全体、更には全身の血流等にも影響がでるのである。

横隔膜の評価

 横隔膜の評価は、可能であれば吸気時と呼気時のX線を確認することだ。横隔膜位置に4cm程度差があるのが正常とのことだが、現代人、特に40代以上の方に関しては2cm未満の方も少なくないらしい。

 しかし、ボクのような整体サロンでは到底無理だし、呼吸器疾患でもない限り処方もおりないかもしれない。なので、簡易的な評価としては1回呼吸量、あるいは呼吸数、肺活量を評価するのも一つだ。横隔膜の可動域が少なくなると1回呼吸量や肺活量は減り、呼吸数は増えるはずである。ただ、この場合他の要因も入るので純粋に横隔膜の動きを評価するものにはならない。

 なので呼吸量や呼吸数に加え徒手的に固さを確認すると良いだろう。下図の位置に母指を当て、圧を加えのその反発を診る。もちろん表層筋があるから、直接横隔膜を触診することはできないが、固さの目安にはなる。

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 注意点は右横隔膜の裏には肝臓があるから、右の方が若干圧が強く感じるはずである。これをデフォルトだと覚えておく必要があるだろう。

横隔膜へのアプローチ

 では、この固くなった横隔膜を如何にして柔らかくし可動範囲を取り戻すのか。

 一つは呼吸を利用し、胸郭の運動を拡大することで横隔膜の運動範囲を促通するというもの。

 横隔膜の動きが制限されると、特に肋骨下部の左右への拡大−縮小の運動が制限される。なので胸骨下の肋軟骨に指をかけ、吸気を介助する。呼気時には動かさずにより肋骨を拡げるイメージで呼吸を介助することで行うと横隔膜の運動が促進され、柔らかくなり可動範囲を増加する。

 セルフケアとしては、以下のような方法が挙げられる。

  1. ロングブレスのような吸気を意識した長い呼吸
  2. 胸郭を持ち上げた姿勢の意識
  3. 胸椎伸展方向のストレッチ
  4. 頚椎の運動性を上げる体操

 この辺は特に手順等解説をしなくても読者の皆様はご存知かと思うので割愛しておく。

おわりに

 いかがだっただろうか。ボクが整体サロンで現代人の身体と向き合っていると特に問題が大きいと考えるポイントである。

 顎関節、頚椎、横隔膜を含めた胸郭、足部。ここらを抑えたら大体いい感じになる。

 足部についてはまた別の機会にでも書きたいと思うので乞うご期待。ってことで、今回はここまで。ほな、また。

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