特別支援教育

子どもに提示する課題が適切かどうかを判断する4つの基準

 こんにちは。作業療法士の中野です。

 子どもの理学・作業療法において気をつけておかなければいけない大前提がある。

 それは提供する課題が、子どもへの期待値として適切かどうか?である。

参考エントリー:理学・作業療法士が注意すべき子どもへの適切な期待について

 ボク達療法士は、子どもを年齢だけでなく子どもの状態から彼らの発達段階を知り、あるいは身体、認知、言語、情緒/社会能力を知り、彼らにとって適切な期待のもと課題の選択・提供ができなければならない。

 またあるいは、お母様を中心としたご家族が、子どもに対し適切な期待をしているかを判断し、「それはお母さん、欲張りすぎでっせ!」とアドバイスを提供できなければならない。

 さて、今回はその課題の提示が子どもにとって本当に適切か、期待しても良いレベルなのか?を判断する基準についてお伝えしたいと思う。

子どもへの期待が適切かを判断する基準

 この問題は、障がいの有無に関わらず子どもへの期待が適切かどうかを判断するのは非常に難しい。

 同じ年齢でも、誕生月によって出来ることの差はある。同じ両親から生まれてきても性格によって発達の特性・速度が変わる。また、同じ月齢でもできることの差はある。発達とは、個別性が強いものだから当然だ。

 だからお姉ちゃんはできていたのにとか、周囲はみんなできているのにとかっていうのは判断基準にならないのだ。

 なので、ボク達はその課題が適切かどうかを判断する基準をもっておく必要がある。以下はその適切さを知る為の4つの基準である。

  1. 期待しているスキルについて教えたか?
  2. 子どもがそのスキルについて理解しているか?
  3. 教えられたことを(その場で手を借りながらでも)実践できるか?
  4. 大人がそのスキルについてのお手本になったか?

 以下、その詳細を書いていきたいと思う。

1.期待しているスキルについて教えたか?

 ボクは最近『下克上受験』にはまっている。笑

 いやぁ、めっちゃおもろいよ。ドラマも見ながら原作読んどります。さてはて、ここでお伝えすべきはそんなことではない。

 中学受験ってのは経験したことのないボクにとって、かなり厳しい道程だ。だって学校で習っていない内容も知っておかなければならないし、学校で教えてもらえる視点とは別の視点を持っておく必要がある。だから、塾が存在するし、中学受験対策のテキストが存在するのだ。塾やテキストで対策することで合格を勝ち取ることができる。逆に言うと塾やテキストで対策しない人が受験で成功することはないのだ。

 どういう事かというと、知っているからできるようになるということだ。ボク達大人は知るために様々な対策を取ることが出来るが、子どもの場合、知るためには教えてもらう必要がある。

 どのようなスキルで、何故そのスキルをあなたに期待し、どのようにしてそのスキルを発揮するのか?教える必要がある。ボクは今うちの下の娘に自分でズボンやパンツを着脱する方法を教えている。教えている内容内容はすぐできるわけではない。だが、いつか実らせるために教えているのだ。

 何故なら、教えなければスキルは実行されないし、教えたことが実る時というのは、子どもへの期待が適切だということを意味しているのだ。

2.子どもがそのスキルについて理解しているか?

 子どもがスキルを実行するにはモチベーションが必要である。いや、モチベーションではないか。スキルを実行する意味・価値が必要である。

 子どもがそのスキルを実行するための意味や価値を知っているだろうか。

 また、その方法についても具体的に理解している必要がある。

 『伝えたかどうか?』が問題ではなく『伝わったかどうか』が大切なんて安っぽい言葉を聞くことがあるが、子どもにとっては重要な言葉である。

 そのスキルを獲得し・実行する価値や意味を理解すること、そしてその方法についてしっかり理解していることは重要だし、それを理解していない(できない)というのは、その課題の期待値が高いということかもしれない。

3.教えられたことを(その場で手を借りながらでも)実践できるか?

 もちろん、これから獲得しようとしているスキルなのだから、今この場で実行できるわけはない。だが練習として、親や支援者の手を借りて実行できなければ、その課題は子どもにとって大きすぎるかもしれない。

 「実際にやってみる」というのは、子どもの理解を確認するという意味もある。

 教えたことを、「ボクが言ったことをもう一回言ってみて?」とか、「今ボクが教えたことを教えて?」とかっていう言い方で確認するのもありだろう。

 ボクは今、我が子のズボンの着脱について、姿勢保持を手伝いながらやっているが、彼女はそれを(恐らく)理解しているので、補助がありながらも自分で積極的に行おうとしているし、促しにも応える。

 これは期待値が適切であるという基準になるだろう。

4.大人がそのスキルについてのお手本になったか?

 例えば上の例であれば、ズボンの着脱を大人が(つまり、ボクが)子どもの目の前でやってみせたか?ということだ。子どもはお手本としてどこでも見たこともない行動を起こそうとしない。

 「教えたか?」とも通ずるが、ただ単にやる意味や意義、その方法を言葉で教えるだけではなく、大人が子どもに対して「やってみせたか?」ということが重要なのだ。

 子どもは親の背中を見て育つというが正にその通り。

 子どものお手本となる行動を親や支援者が行っている必要がある。

 また、反対に子どもに望まない行動を親や支援者を行ってはいけない。子ども達の支援の場にてよく聞く「暴言を言う」とかってのがあるけど、支援者側の言葉遣いは大丈夫か?っていうのはしっかり理解しておく必要があるのだ。

全ての課題について基準をチェックすべし

 特にセラピストが子どもに課題を提供する上では、その全ての課題が適切かどうかをチェックするべきである。

 子どもの発達を促すには、課題がこの基準を満たしている必要があるからだ。基準を満たしていない課題は子どもの発達を阻害することはあれ、促進することはない。

画像引用元:SAMURAI-OT blog
画像引用元:SAMURAI-OT blog

 作業療法士にとって、子どもに対する課題の提供とは、まさしく『作業の調整』という大切な仕事の一つなのだけれど、この基準を明確に持ち、運用していなければならない。

 今回提供した課題選択が適切かどうかの基準は、作業の選択の基準とも通ずるのだ。

おわりに

 小児に携わる理学・作業療法士は、課題の適切さよりも『姿勢』や『方法』について焦点化する傾向があるように思う。もちろん、そういう視点も大切だ。

 だけど、ボク達の仕事は『作業の可能化』である。

参考エントリー:作業療法の目的と作業療法士の役割をWFOTの声明文から学ぶ

 作業を可能にするのは『姿勢』や『方法』も大事だけど、何よりその課題が適切かどうかが最も重要なのだ。

 是非、この基準を満たしているかどうか常に問い返して頂きたい。ってことで、今回はここまで。ほな、また。

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