特別支援教育

発達障がい児に対する感覚統合療法の基本的考え方と実践

 こんにちは。作業療法士の中野です。

 自閉症スペクトラム児やLD・ADHD等狭義の発達障がいをお持ちのお子様に対するリハビリテーションと言えば『感覚統合療法』というくらい日本においてはメジャーな手法である。

 もちろん、それがダメというわけではないが何となく思考停止している感は否めない。

 とはいえ、発達障がい児のリハビリテーションに携わるにも関わらず感覚統合を知らないというのではお話にならない。

 今回は、発達障がい児に対する感覚統合療法の基本についてまとめたいと思う。

感覚統合療法とは?

 アメリカの作業療法士であるA.J.Ayers(以下、エアーズ)は、感覚統合を『使うために感覚を組織化すること』と簡潔に定義し、以下の3つの要素があるとしている。

  1. 感覚入力には交通整理が必要
  2. 感覚入力は脳の栄養
  3. 感覚統合は部分から全体を作る

 以下、詳細を解説する。

1.感覚入力には交通整理が必要

 ヒトの行動は環境との相互作用によって生み出される。環境からの情報は各種感覚器を通じて『感覚』の入力によって得られるが、その感覚は渋谷のスクランブル交差点のようにアチコチから押し寄せる。

 その押し寄せる感覚を分類・整理することで、組織化され行動の源となる。

 どの感覚をどのように使うか?を適切に行うには各種感覚を『交通整理』しなければできない。

 例えば、ロックバンドのライブの中で本が読めないように、行動を促すために環境から与えられる情報(感覚)を整理する必要があるのだ。

2.感覚入力は脳の栄養

 ボク達の行動は全て脳の適切な活動により行われている。

 脳が適切な行動を行うには充分な栄養が必要なわけであるが、血流だけでなく感覚入力も脳にとっては大事な栄養であるという考え方だ。

 感覚遮断すると健康な人間も15分程度で幻覚を見る可能性についてはよく知られた話である。

参考エントリー:「感覚遮断」実験で人間の何かが発現してくる。

 感覚入力による環境との相互作用は人にとって必須の『栄養』である。発達障がいを持つ子どもたちはこの栄養を正しく消化できない(統合できない)状況にある可能性を知り、しっかり消化させるためのアプローチが必要である。

3.感覚統合は部分から全体を作る

 エアーズはこれを手と指の協調や眼と手の協調の例で解説しているが、少し分かりにくい。

 手と指の協調や眼と手の協調といった応用行動は、各種感覚をしっかり入力し、捉え、それぞれを統合していくことで成り立っている。

 日本では以下のようなピラミッド図がよく知られているだろう。

 画像引用元:感覚統合Q&A 協同医書出版

画像引用元:感覚統合Q&A 協同医書出版

 発達障がいを持つ子どもたちは、この土台の各種感覚のサイズが違ったり、傾いていたりするため、上が積み上がらない状態と言える。

 感覚統合は部分(各種感覚入力)から全体(応用動作)を獲得するという考え方である。

感覚統合療法の目的

 感覚統合療法は対象者が『適応反応』を獲得することを目的に行われる。適応反応とは、環境からの情報を的確に行動に移せる事を言う。

 ボク達は自分の身体の位置や動きを理解し、どのように見て、聞いて、それらからどのように行動すれば目的の結果が得られるかを瞬時に獲得する。これらは別に訓練によって獲得したものではなく、自然に身につくスキルである。

 何故、自然に身につくか?それはその方が効率的だからである。人は結果をより確実に、効率よく得られるよう学習する生き物なのだ。

 しかし、各種感覚入力に躓きがあったり、その感覚を適切に利用できなければ、ボク達はどのように行動すべきか良いかを決められなかったりする。

 ボク達の適応反応は感覚統合の上に成り立つものだと考えられており、感覚統合療法により、適応反応が獲得される、増えることが目的となる。

感覚統合療法の対象、感覚統合障がいとは何か?

 発達障がい児に対する感覚統合療法というタイトルを付けているが、その理由は発達障がい児の多くが感覚統合障がいを抱えているからである。

 では、感覚統合障がいとは何か?

 エアーズは感覚統合障がいを『消化器系における消化不良と同じである』としている。

 先程解説したように、脳内で感覚が『交通渋滞』を起こしている状況と同じだということだ。

 この感覚統合障がいにより、発達障がい児にみられるような各種症状が表出していると考えられている。

 以下の表は、感覚の積み重ねにより得られる人の行動(能力)である。何ができていて、何ができていないか?を観察することで感覚統合障がいの可能性を図ることが可能となるだろう。

画像引用元:感覚統合Q&A 協同医書出版
画像引用元:感覚統合Q&A 協同医書出版

発達障がい児に対する感覚統合療法を用いた作業療法

 作業療法士の仕事はあくまで、対象となる子どもたちと両親の人生における健康と安寧である。

 子どもや両親が人生において健康や安寧を阻害されている場合、その原因が感覚統合障がいであるなら感覚統合療法を用いる可能性がある。

 感覚統合障がいが人生における健康と安寧の阻害因子になる要因としては上の図でも紹介した通り『感覚統合の最終産物』と作業そのものに影響がある場合だと考えられる。

 感覚統合を用いた作業療法は、通常子どもが遊びの中で獲得するはずの『適応反応』を障がいがある中でも獲得していけるよう支援することにある。

 つまり、感覚統合が手段ではなく、作業療法の手段として感覚統合理論を用いるという考え方のほうが個人的にはピタッとくる。

 その子どもが、あるいは両親が困っている何か、健康のため、あるいは安寧のため手に入れたい何かの為に感覚統合理論の活用が有効である場合に用いる。

 以下は、感覚統合理論の活用が妥当かどうかの評価、並びに活用が妥当だと評価した場合の実践について簡単に解説しようと思う。

感覚統合障がいの評価

 感覚統合障がいの有無に関わらず、作業療法のオーダーが出た場合にまず評価すべきは、子どもと両親の人生における健康と安寧がどないな具合か?阻害されているとしたら、それはどんな理由で、どの程度か?ってところからはじまる。

 が、ここではそれを言い始めるとキリがないので感覚統合障がいが起因しているという前提で話をすすめる。

 感覚統合障がいの評価は検査と観察によって行われる。観察に関しては臨床経験にも左右されるが、一応形式化された検査があるので紹介しておく。

 一つが日本版ミラー幼児発達スクリーニング検査(JMAP)と呼ばれる検査。

 検査内容や、評価表は感覚統合Q&Aにも紹介されているが、パシフィックサプライの正規の検査キッドを用意しようと思うとベラボーに高い。ボクも実物見たこと無い。大学とかにしか無いんじゃないかな?苦笑

 で、今は感覚統合学会の理事をお務めの太田先生が無料で質問紙評価を開発中である。

参考:Japanese Sensory Inventory Assessment

 質問紙なので作業療法紙が臨床の時間を使って行わなくても施設のスタッフや両親につけてもらえるのが良いところ。しかも無料だしね。

 これらでスクリーニングして、あとは観察からどの感覚が鈍麻だ過敏だ、だからどうだ?って推論していく過程が評価となるだろう。

感覚統合療法の実践

 感覚統合療法は以下のような流れで行われる。簡単に解説するが、詳細はまた別の機会に書くことにする。ってか本読んだり、講習に参加する方が良いかもね。

  1. 感覚入力を調整する(交通整理)
  2. 姿勢反応を向上する
  3. 運動の企画能力を向上する
  4. 身体の左右を協調的に動かす能力を向上する
  5. 視覚による知覚・認知能力、および聴覚による言葉の能力を向上する

 これらは感覚統合Q&Aから抜粋した感覚統合療法の流れである。

 ボクが体験したものと相違ないと感じたのでそのまま紹介した次第。

 基本は、先程の紹介したピラミッドの土台をどのように整えるか?を評価から導き出した情報を元に提供していく。

 ダイナミックな遊具や部屋が必要とされているが、ボクは公園でも、小さな少しのおもちゃがあれば、セラピストがおもちゃになりきることで提供可能だと思っている。ま、療法士の健康管理には充分注意を払う必要はあるのだが。

参考書籍

 以下、今回のエントリーを書くに当たって参考にした書籍を紹介しておく。

おわりに

 書き終わってみれば結構なボリュームになってびっくりした。

 ボクのブログは触りを知るのに有効な内容を心がけている。だって、本を読んだり、講習を受けたりする方が為になるのは当たり前だから。

 でも、それにもお金がかかるから、その前段階の参考資料になれば…なんて思ってる。

 このエントリーは少し長くなったが、感覚統合を一から学ぶに値するかどうか、書籍を購入するかどうかの判断にはなるのではないかと思う。是非ご参考あれ。

 ってことで、今回はここまで。ほな、また。

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