特別支援教育

ASD児に対するソーシャルスキルトレーニングの実際

 こんにちは。作業療法士の中野です。

 先日紹介した『自閉症の僕が跳びはねる理由』を読むと自閉症スペクトラム児へのソーシャルスキルトレーニングを見直さざるを得ない。

参考エントリー:自閉症スペクトラム児の行動を理解し、可能性を知る為の良書

 自閉症スペクトラム児へのソーシャルスキルトレーニングは公式・非公式に様々なものが存在する。

 しかし、彼らの行動を理解し、尊重したものであるとは言いがたい。

 ボクが前出の書籍を読んで感じたのは、彼らのソーシャルスキルトレーニングを行うべきは療法士など単発で関わる支援者ではなく、やはりご両親や先生など毎日関わる支援者なのだ。

 リハで何とかするっていうのは傲慢な支援者の考えである。

 前出の書籍で何度も出てくるフレーズが「温かく見守ってください」だったり、「忍耐強く教えて下さい」である。

 リハという短い時間、あるいは頻度の低い関わりで彼らのソーシャルスキルを劇的に向上させることは困難であると言わざるをえない。

 ボク達リハ職の役割は、その子どもの行動を極力理解しようと努め、そのことをご両親や先生方にフィードバックしていくことだろう。

 また、自閉症スペクトラム児に対するソーシャルスキルトレーニングの基本的な考え方については別のエントリーを参考にしてもらえたら幸いだ。

参考エントリー:自閉症スペクトラム児に対するソーシャルスキルトレーニング

ソーシャル・スキルにはどのようなものがあるか?

 ソーシャルスキルトレーニングに取り組む上で重要な事の一つが、ソーシャルスキルにはどのようなものが存在するか?である。

 アメリカのボーイズタウンでの実践であるコモンセンス・ペアレンティングによると、人が社会で円滑に生活を送るために必要なソーシャルスキルは182種類あるとされている。

 もちろん、その全てを学ばずとも大人として円滑に生活をしている人もいるだろうし、アメリカと日本との社会の違いを考えると多少違いはあるだろうが前提として知っておくべき項目がそれだけあると知っておくべきだ。

 その中でも特に知っておくべき、子どもにまず身につけてもらいたいソーシャルスキルとされているのが以下の5つ。

  1. 指示を受ける
  2. 許可を得る
  3. 助けを求める
  4. NOを受け入れる
  5. 落ち着く

 これら5つのソーシャルスキルがその他のソーシャルスキルを学んでいく上でのベースになるとされている。

 そして、これらスキルの獲得こそソーシャルスキルトレーニングの第一歩である。

 自閉症スペクトラム児の場合、5番目の「落ち着く」の理解を深め、個々のパニックなどに応じた内容を吟味する必要はあるが、概ねこの5つをベースに考えていく。

ソーシャルスキルの評価

 トレーニングを行う上でもう一つ重要な事がソーシャルスキルの評価である。

 どのように評価するか?だが以下の項目に当てはめるのが第一かと思う。

  1. している
  2. できる
  3. 知っているができない
  4. 知らない

 例えば、上で例に挙げた「許可を得る」という項目。

 常に状況に応じて許可を得ることができていれば「している」と評価できるし、時折許可を得ていたら「できる」と評価できるだろう。

 難しいのが「知っているができない」なのか「知らない」なのかである。

 この子どもが許可を得るべきタイミングだったり、許可の得方を知っているのかどうか?を評価するのは非常に難しい。

 その子どもが本当に理解しているか?理解していてできないのか、理解できていないのか。あるいは一度は理解したが覚えていないのか?についてはかなり吟味が必要だ。

 リハ職の専門性はこの部分をはっきりさせることではないだろうか。

 そして、それを元にその原因を探り、「できる」→「している」としていくためにどのようにすべきか?を考えることが重要な役割になるだろう。

ソーシャルスキルトレーニングの実際

 実際に行うのはご両親であったり毎日関わる先生方である。

 そしてボク達は専門性に基づく見立てに沿って、どのような関わりがスキルの獲得に繋がるかをお伝えすることが役割になる。

 その方法の基本は『子育て』である。

 ボク自身、発達障がい児への関わりを通じて学ぶのは『丁寧な子育て』である。

 子どもたちが理解しやすいように伝えるにはどうしたら良いか?子どもたちを乗せるにはどうしたら良いか?を考えるわけだけど、その基本は子育てそのものだ。

 前出のコモンセンス・ペアレンティングもいわゆる子育て法なのだが、ボクはこの子育て法は『子育てのユニバーサルデザイン案』だと理解している。

 障がいのある子どもでも、健常の子どもでも学んでいくべきことは一緒で、その学び方をより丁寧に、より一貫して学ぶ為の方法論だ。

 詳しくは『7回連続講座』を受けて頂ければと思うが、基本は本当に丁寧な子育てである。

 この方法論を学ぶと自分が実践している子育てが如何に粗雑で、手抜きなものだったかを痛感する。

 如何にして子育てをユニバーサルデザインにするかを考えることこそ良質なトレーニングを可能とするだろう。

 ちなみに、ボクも今年中を目処に皆さんにお伝えできる資格を取得予定なのでお楽しみに。

おわりに

 ソーシャルスキルトレーニングは子育ての一環である。

 子育ては日本においては色んな情報が溢れているものの、有効性を担保したものはないし、『考え方』を押し付ける形のものが多い印象である。

 だから、定式化されたソーシャルスキルトレーニングの方法論を参考にするのも難しい。

 それよりはご両親や先生方が如何にして丁寧な子育てを行えるか?を共に考えお伝えしていくことの方が重要だろう。

 もっと具体的な内容を書くことは難しいけど、是非「丁寧な子育て」を意識してもらえたらと思う。

 ってことで、今回はここまで。ほな、また。

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