特別支援教育

理学・作業療法士による座位保持装置作製支援のポイント

 こんにちは。作業療法士の中野です。

 少し前に酔っ払いながら過激なエントリーを書いてしまったのを思い出したのは、某PTさんから座位保持装置作製についての質問メールが届いたからだ。

参考エントリー:姿勢評価ができない療法士が座位保持装置作成に口出すな!

 ボクが座位保持装置制作業者で勤務していた経験と、今現在整体業で「姿勢」というものに向き合っている経験から座位保持装置を作るときのポイントについてシェアしたいと思う。

目的を明確に!

 冒頭の写真のように、子どもにとってお母さんの膝の上ほど心地の良い椅子はない。

 何かしらの作業をする際、お母さんに抱っこされながら、あるいは担当セラピストに抱っこされながら作業することで作業効率は上がるはずだ。

 しかし、常にお母さんが傍にいるわけではないし、お母さんも椅子代わりになってばかりもいられない。

 だから、椅子という道具を使う。

 椅子には様々な目的が存在する。今、ボクはバランスボールの上に座ってこのブログを書いているけど、ボクはこの椅子を使うことで抗重力伸展筋群を賦活させることに成功している。そのことで、上肢操作はより機能的・効率的になり、仕事のパフォーマンスが向上するというメリットを狙っている。

 だが、「はぁ、疲れた…」という時とか、「あぁ、お腹いっぱい、ちょっと休憩…」って時にバランスボールを椅子として用いない。少しリクライニング角度がついたお客様の待合室に置いている一人用ソファに座る。この時の姿勢は特に機能的ではない。本を読む程度の作業は可能だが、PC作業には向いていない。パソコンの位置を設定して作業することも昔はあったがやはり仕事のパフォーマンスは低下する。

 このように椅子は動的な目的と静的な目的どちらにも使い、それぞれで必要な形状・角度が変わるのだ。

 だから、まずは椅子の目的を明確にする必要がある。もちろん、動的な目的にも、静的な目的にも使いたいという要望もあるだろうが、それならば椅子の形状・角度が変わる仕組みを使うしか無い。

 例えば、リクライニング機能やティルト機能がそれに当たるが、モールド型の座位保持装置の場合リクライニング機能を使うと背・座のクッションの間に隙間ができて落ち込むというデメリットもある。モールド型のクッションを使う際にはティルト機能のみで対応することが望ましいが、そもそも腹部の張力を保てていない形状にすると安楽肢位は取れても活動的肢位は取れない。

 なので、動的・静的両方の目的をもって使う場合には、活動的な肢位をベースに作っていく必要がある。

活動的な姿勢を作る時のポイント

 活動的な肢位を作る時のポイントは以下の通り。

  1. 痛みが出ない
  2. 筋の長さを作る
  3. 重みを取る
  4. 坐骨を支える

 痛みが出る椅子というのは、動的にも静的にも使えないから論外。股関節が圧迫されていたり、膝窩部で圧迫があったり、側弯の強い方であれば、凹側の支えが痛かったり…。椅子による痛みというのは少なくない。まずは痛みが無いことが条件である。

 次に筋の長さを作ること。これは特に腹筋の話。腹筋がたるんでいる状態。つまり、円背になってしまっている状態では上肢操作は上手くできない。骨盤を起こし長軸方向に頭を持って行った状態で保持することで腹筋の長さがキープされる。

 腹筋の長さを作ることとリンクするが、腹筋の長さをキープした状態で頭を保持させようと思うと重みを取って上げる必要がある。何の重みか?胸郭だ。人間の身体の構造上脊柱から鳥かごのように前に膨らんでいる胸郭を腹筋だけで支えている。

 この重みを取らないと腹筋の長さをキープさせるのは難しい。下部肋骨を下から持ち上げるようなイメージで背もたれを作り重みを取ってあげる必要がある。そして、更に不安定になりやすい肩甲骨のサポートも考えなければならない。もちろんクライアントのレベルにもよるが、肩甲骨の支持性が不安定な為に上肢操作やヘッドコントロールが難しいケースもあるので、クライアントの状況に応じて肩甲骨のサポートも必要となる。

 上半身の重みが背もたれと抗重力伸展筋群で保持できれば股関節への負担は大きく軽減する。その負担が少ない状態で坐骨に重みを下ろしていくことで臀筋群が発達する。

 特に重度のお子様の臀部は小さい。坐位の経験が少ないからお尻が発達しないのだ。理想的な荷重を加える事で臀筋群が賦活する。股関節周囲筋が低緊張であることが多いのでしっかりとアライメントを整えた上で外側から包み込むようにサポートし股関節を保護しながら坐骨で荷重できるような形状にする。

 モールド型の座位保持装置でない場合は座面の形状を変えるのは難しいが、座面のみクッションを作るなど方法はある。それができるかできないか?は業者に勤めていたボクなら分かる。でも知らなければ業者に頼むこともできない。セラピストは業者がどこまでできて、それ以上は(安全上)難しいということを知っておく必要があると言えるだろう。

静的な姿勢の作る時のポイント

 例えば食後、例えば運動後の休息、お昼寝などに座位保持装置を用いることもありうる。

 そういう状況下でもしっかりと休める必要がある。

 動的な活動行う際はヘッドのコントロールをクライアント自身に行ってもらいたいから、基本的にヘッドレストは必要ない。しかし、静的な肢位にする際、少し寝かせる方向へ角度を付けるなどの場合はヘッドレストが必要になる。

 そして、本当に静的な姿勢にするためには座っている本人が休みたいという欲求があるかどうかによる。

 活動したいのに椅子に角度を付けられてしまうと人は起き上がろうとして、緊張を高める。

 しかし、頭が支えられ、力を抜いても良いんだよという合図があると力を抜きやすくなる。

 新幹線や車で寝ている人を見ていたら分かるが、あの手この手で頭を保持しようとしているはずである。手で支えたり、道具を使ったり。

 静的な姿勢を作るためには如何に頭部を休息させるか?が重要になるのだ。

おわりに

 椅子はあくまで道具であるが、理学・作業療法士が椅子作りに関わるのであればセラピストの手の変わりになる椅子が理想形である。

 遊んでもらう時、休んでもらう時、セラピストは自分の手と身体を上手く使って子どもの動きを助ける。

 その役割を椅子に担ってもらうのだ。

 椅子は(子どもの動きに合わせて)動かないから、当然手でコントロールするより断然難しい。パーフェクトな椅子など存在しない。

 しかし、ボク達が関わる以上、ベターな椅子は作ってあげたいものである。

 世の中から最悪な椅子、使いものにならない椅子、ホコリを被った椅子が無くなることを心より祈っている。

 ってことで、今回はここまで。ほな、また。

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