評価と治療

理学・作業療法士の痙性に対するアプローチにおける考え方

 こんにちは。作業療法士の中野です。

 以前、以下のような痙性に対するアプローチのエントリーを書いた。

参考エントリー:筋緊張亢進(痙性)に対し理学・作業療法士ができる事とは?

 そこでは、頭頸部へのアプローチやポジショニングの重要性について書いた。

 ま、それはそれで間違いではなくて、痙性に対してアプローチする際には有効だと思う。

 今回は、そういう具体的な内容ではなくて、理学・作業療法士が痙性をどう捉えて、どのように考えの元にアプローチしていくべきか?について考えたのでシェアしたいと思う。

痙性の治療は仕事ではない

 痙性を無くすためには、脳機能が回復する必要がある。

 痙性とは陽性徴候であるから、普段抑制されているはずのものが、その抑制がはずれ過剰に働いているという事だ。この辺は生理学が苦手な方でもわかると思う。

 だから、その外れてしまっている抑制を再び抑制させることが理学・作業療法士の仕事か?と言われたらボクは違うと思っている。

 外れた抑制を再び抑制するというのは脳機能を回復させることに等しい。だから、ボク達の仕事は痙性を治療することではないのだ。

痙性が問題になる要因を知る

 例えば脳卒中後の片麻痺患者をイメージしてほしい。急性期じゃなくて痙性が高まっている方ね。

 こういう人たちも寝ている間はその過剰な緊張が緩まっている事を皆さんはご存知だろう。

 つまり脳機能に問題が発生し、必要な抑制が働かなくても、抑制が必要ない状態を作れば(例えば睡眠時のように)抑制させる必要がなくなるということだ。

 では、人はなぜ抑制しないといけにのだろうか。以下に思いつくことを列挙してみた。

  • 身体的ストレス(努力が必要な運動)
  • 痛みなどの侵害刺激
  • 心理的ストレス(興奮・怒り・恐れなど)
  • 支持基底面の狭さ、バランスの不安定さ
  • 感覚情報の欠如
  • 咳やくしゃみ、あくびなど

 他にもあるかもしれないが、このような時に人は筋緊張を高めることになる。つまり、片麻痺患者においては痙性を高めてしまう要因となる。

 もちろん、急性期で筋緊張が低い状況から考えればある程度上がってきてもらわないといけないのだけど、過剰に強いのは問題になることがある。

 つまり、理学・作業療法士にとって片麻痺患者の痙性に対してできることは、痙性を上げる要因を取り除き、出来る限り痙性を問題としないレベルで生活させることではないだろうか。

痙性を目立たせない理学・作業療法士アプローチ

 以上のような要因で痙性が高まっているとするならば、ボク達ができることが見えてくるだろう。

 それはストレスなく生活してもらうことだ。もちろん、書くのは簡単だが実際は簡単ではない。だが、それを目的にお互い頑張るしかない。

 ボク達は欠如されている感覚情報を提供し、身体図式を再構築するお手伝いをするし、それらを元に体幹や四肢の近位部の安定性を高めるように促すし、広い支持基底面を必要とする状況から、より狭くても大丈夫なようにしていく。

 それが痙性とのつきあい方であり、有効なアプローチだと思う。

 痙性とは決して抑制するものではなく、抑制しなくてもいい状況を再学習させることではないだろうか。

とは言え過剰な痙性が生活に大きな弊害を与えている場合は…

 そもそも本当に痙性が問題点か?

 まずはそこを評価することが重要であり、痙性だけを悪者にしていないかを考えなければならない。

 昔は特にそういう傾向が強かったと思うが、痙性って悪者にされがちだ。多くの片麻痺患者に出現している特徴的な症状だから仕方がないと思うが、痙性が強くなるというのは患者がこの世界に再適応しようとした努力の結果である。

 間違った努力をさせた周囲にいる医療専門職の責任なのだ。

 まず、本当に痙性が生活の問題を生んでいるのか、その他の要因は無視して良いのか考える。

 そこでやはり痙性が問題であり、何とかしないといけないという状況になった時にはボツリヌス毒素療法だったり、バクフェロン髄腔内投与療法だったりの適応であり、リハの出番ではない。

 ボク達は各種療法によって下がった痙性の状態を以下に継続し、持続させるか?を考え、安定性のある効率的な運動を再学習させることがテーマになるだろう。

おわりに

 痙性って本当に悪者になりやすい。特にリハ職種はそれが自分たちの原因である可能性を無視してはいけないのに…。

 とはいえ、仕方ない面もある。在院日数が減り、FIMの点数で判断されるようなご時世では如何にADLのレベルを上げるか?がポイントとなる。

 そんな中でも、ボク達は痙性が出現するメカニズムを知っている。

 特に体幹や四肢近位分の不安定性が原因で、抹消を過剰に努力し痙性を高めるというパターンが一般的だ。だとするならば、ボク達は真っ先に安定性を高めるようなアプローチをすべきだし、そのことがADL向上にも役立つはずである。

 是非ともご自身の痙性との付き合い方を見直し、クライアントのQOL向上に役立ててほしいと思う。

 ってことで、今回はここまで。ほな、また。

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