哲学・科学・理論

理学・作業療法士が知っておくべき運動制御のキホンのキ

 こんにちは。作業療法士の中野です。

 今では当たり前となった運動制御理論。しかし、ボクが学生の頃は授業でまともに教わることは無かった。

 臨床に出てからもごく一部の英語を使える先生だけが運動制御に関する内容を教えて下さった。それがボクにとっては故・今川忠男先生だったのだが。

 恐ろしいもので、新しい発見により時代が一気に変わる。

 昔は反射理論や階層理論をベースに開発された治療法が、今では時代遅れであり、使い物にならない。例えばボバースやPNFも「運動制御」をベースに再構築されているのだ。

 ボク達はセラピストであり、運動制御学者ではない。しかし、運動制御をベースに使ったリハビリテーションの専門家である。

 その為、最低限の知識は得ておかなければならないだろう。

 ボクもまだまだ勉強中の身ではあるが、ボク達が最低限知っておくべき、キホンのキについてまとめたのでシェアしたいと思う。

運動制御とは?

 運動制御とは何か。

 モーターコントロールを読んでも明確な定義はされていないが、文脈から以下のように定義することができる。

運動制御とは、動作の発生理由と自然科学の研究であり、空間の中で姿勢を安定させる事と動かしていくことの両方が含まれる。

運動制御と姿勢制御

 運動制御というものの研究においては姿勢制御と運動制御を含めて運動制御とされている。しかし、臨床的には分けておいた方が良い。

 何故なら、運動のコントロールにおいて、まず姿勢がしっかりコントロールされていることが重要であり、姿勢制御に対してアプローチすることが多いからだ。

 下の図は、1994年massionによる研究で示されたものである。

posture and motor contorol

出典:Current Opinion in Neurobiology 1994, 4:877-887

 英語で少し分かりにくいかもしれないが、運動に先駆け姿勢コントロールが起こっており、姿勢コントロールにはオリエンテーションと安定性が重要で、その姿勢コントロールを可能にさせるのは身体図式であり、各感覚情報であるというのを図式化したものである。

 姿勢制御系に関しては別のエントリーを参考にして欲しい。

参考エントリー:ボバースコンセプトにおける姿勢制御の捉え方

 タイトルはボバースコンセプトに基づく…としているが、ボバースコンセプトに基づかなくても姿勢制御系に関しては一緒であるので参考にしてもらえれば幸いだ。

 で、これはネコの実験でも証明されている。

F16.large

出典:Independent and Convergent Signals From the Pontomedullary Reticular Formation Contribute to the Control of Posture and Movement During Reaching in the Cat

 この図はネコが餌にリーチする際にネコの脳や筋がどのように動いているか?を示した図である。

 リーチの運動が起こる約100ms(0.1秒)前にリーチする反対側の体幹が伸展し、頭部を安定させるように働きはじめ、その後上肢(前足)の収縮が始まるという事を示されたものだ。

 ボク達はクライアントの運動を変える為の介入を行うが、それに先駆けて姿勢コントロールに問題がある場合、姿勢コントロールにアプローチする必要があるのだ。

運動制御理論とは?

 運動制御理論とは、特定の理論ではない。昔は反射理論や階層理論によって運動の全てを説明してきたが、Bernsteinがシステム理論によって「身体は莫大な自由度を持つ筋骨格系からなる」と問題提起し、個体の反射や皮質からの命令でのみ起こっているものではないと示した。

画像引用元:リハビリテーション解体新書
画像引用元:リハビリテーション解体新書

 この他にも運動システム理論や動的活動理論など運動制御に影響を与えている理論は多岐にわたり、それら全てが間違いであり、正解であるという関係性にあるとボクは思っている。

motorcontroltheory

 では、運動制御理論とは何か?それを上手く表わしているのが以下の図だろう。

motorcontorol

 運動は個体と課題、環境の相互作用によって起こっている。

 そして、この個体(人)の部分を表したのが以下の図だ。

elementsofmotorcontrol

 筋骨格系や感覚系のシステムがしっかり動いていること、神経系・反射のメカニズムがしっかり働いていること、予測的姿勢制御システム(フィードフォワードシステム)、適応メカニズム(フィードバックシステム)などが上手く働いている事で運動は制御されている。

運動制御のプロセス

 少し話は飛ぶかもしれないが、上で書いたように個体・環境・課題に何かしらの問題が起こり、適切に運動がコントロールできなくなった場合、再び運動制御機構がしっかりと働くようにボク達はアプローチしていく。

 その際、運動制御が成り立つプロセスを知らなければ間違ったアプローチをしてしまう可能性がある。

 そして、運動制御の段階についてRoodは次のように示している。

  1. 運動性
  2. 安定性
  3. 安定性に基づく運動性
  4. 操作

 これは子どもの発達を考えれば分かる。

 生まれたての子どもは無秩序に手足を動かす。(GMsという。)これが言わば運動性だ。支持面は背中や頭の下にあるが、それを支持面として使えてはおらず(安定性はない)、ただ重力によってその姿勢で保たれているだけである。

 しかし、そうやって手足を動かす中で、徐々に安定性が出てくる。支持面を支持面として使えるようになるということだ。つまり、安定性は運動性のある所に生まれてくるということだ。

 安定性が出てくると、子どもは定頸し頭を持ち上げるようになったり。手足を随意的に持ち上げ、口に運んだりする。あるいはその支持面を利用して追視、リーチ、寝返りと次々と動作を身に着けていく。つまり、安定性があるから運動ができるという状況だ。

 そして、これらを身につけた暁に、手での細かい操作などができるようになるという発達のプロセスと同じである。

運動制御理論に基づくリハビリテーションアプローチ

 運動制御理論に基づくリハビリテーションアプローチを行う際、個体・環境・課題のどの部分に大きな問題を抱えているか?について吟味する必要がある。

 課題であれば段階づけしたり、課題を変えるなどの方法があるし、環境が問題であれば運動が可能となる環境を作ることが大切になってくる。

 あるいはクライアント自身の姿勢制御や筋骨格系の問題に基づくものであれば、ボク達の守備範囲内においてはアプローチしていく。

 クライアントの機能にアプローチする際は、クライアントの運動制御段階を意識し、動きがなければ動きを促した上で安定性を作り、その安定性を活かして次の運動を作るというプロセスを忘れてはいけない。

おわりに

 今回ここで書いた内容はごくごく基本的なものであり、さわり程度のものである。

 是非運動制御についてはご自身でも学んでみて欲しい。

 恐らく全ての療法士の本棚にはモーターコントロールが入っているだろう。

 現在は第4版、ボクは第2版を買ったけど、一番枚数の少ない第1版から読むと良いとアドバイスされてAmazonの中古で1000円にて購入した。笑

 是非、皆さんも本棚の肥やしで終わらせず、一通り読んで、ご自身の臨床に活かしてみて欲しい。

 ってことで、今回はここまで。ほな、また。

追伸…運動制御をベースにしたPNFやボバースコンセプトに関するエントリーまとめました

 運動制御に基づくアプローチであるPNFやボバースコンセプトに関する内容をまとめたので、他にも知りたい方は是非参考にして頂きたい。

参考エントリー:

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