特別支援教育

重度脳性まひ児の呼吸障害と呼吸リハビリテーション

 こんにちは。作業療法士の中野です。

 本日は、特に重度の脳性まひ児に随伴する症状の一つとしてポピュラーな呼吸障害について取り上げたいと思う。

 呼吸障害は、摂食障害や消化器系の問題ともリンクしており、脳性まひ児のQOLを下げる大きな要因の一つとなっている。

 近年では、抗生物質の進化により呼吸器感染症による死亡例は減少しているものの、抱えている問題は大きいため特に重度脳性まひ児にとっては積極的に介入すべき点となっている。

 今回は重度脳性まひ児に随伴する呼吸障害の病態と、リハビリテーションについてまとめたのでシェアしたいと思う。

脳性まひ児に随伴する呼吸障害

 脳性まひ児の呼吸障害は大きく分けて2つの問題が原因とされている。

 1つは、上・中気道の器質的狭窄による通過障害。もう1つが、胸郭の運動性低下に伴う換気量の低下である。

 下の図1はその関連を上手く表わしているので引用する。

引用元:重度脳性麻痺児の呼吸障害の対策と経過の検討
引用元:重度脳性麻痺児の呼吸障害の対策と経過の検討

 更に下の図2では、脳性まひ児の呼吸障害が様々な悪循環の末悪化していく事を示している。

引用元:重度脳性麻痺児の呼吸障害の対策と経過の検討
引用元:重度脳性麻痺児の呼吸障害の対策と経過の検討

 図1にあるような諸原因により上・中気道が狭窄したり、胸郭の運動性が乏しくなることにより換気量が低下する事で呼吸は更に努力性となる。その努力性呼吸が引き金となり、更に筋緊張を高める事が気道の狭窄を強めることに繋がったり、胸郭の運動性を阻害する事に繋がっている。

 この何処かで断ち切ることが、彼らの豊かな人生のためには必須である。

脳性まひ児の呼吸障害に対するリハビリテーション

 ボク達、リハビリテーション職種が脳性まひ児の呼吸障害に対してできることは限られてはいるものの沢山ある。

 例えば上・中気道の狭窄に対して、アデノイド肥大などには対応できないが、下顎の後退や舌根沈下に対しては行えることがある。また、分泌物の貯留を徒手的に排出する手伝いもできるだろう。

 また、胸郭の運動制限に対して、原因となる各種変形を改善させることはできないかもしれないが、予防することには関われるし、異常な筋緊張をゆるめたり、呼吸筋を賦活することで胸郭の運動を促通することはできるだろう。

 つまり脳性まひ児の呼吸障害に対して、ボク達リハビリテーション職種の介入は非常に重要なファクターとなる。

 脳性まひ児の呼吸障害に対して介入するに当たり、まず重要なことが的確な評価である。ボク達は以下のような項目を精査し、リハビリテーションに活かさなくてはいけない。

脳性まひ児の呼吸障害に対するリハビリテーション評価

 ボク達は最低限以下のような項目について知っておかなければならない。

  • 呼吸パターン(異常呼吸の有無)
  • 胸郭の変形の有無
  • 姿勢コントロール能力
  • 呼吸の方法(鼻呼吸or口呼吸、呼吸の左右差、いびきなど)
  • 喘鳴の有無
  • 聴診による吸入状況の確認(姿勢の違いによる変化も含めて)
  • 呼吸筋・呼吸補助筋の活動状況
  • 胸郭・体幹の可動性
  • SpO2などバイタルサイン

 これらは全て理学・作業療法士が単独でチェック可能なものなので、最低限これくらいは把握した上で介入すると良いだろう。

脳性まひ児の呼吸障害に対するアプローチ

 様々な方法があると思うが、以下の3つは呼吸に対してアプローチする際行う典型的な3つと言えるだろう。

  1. ポジショニング
  2. いわゆる呼吸理学療法(呼吸介助技法、排痰技法など)
  3. 胸郭のモビライゼーション

 以下に詳細を解説する。

1.ポジショニング

 脳性まひ児の呼吸障害において多くの場合、背臥位時に特に換気量が低下し、腹臥位やどちらかの側臥位(病態によって得意・不得意が存在する)において換気量が上昇するというケースが見られる。しかし、それも人によって違うので一概には言えない。まずは上記項目を各肢位にて評価しておくことが重要である。

 また、ポジショニングは得意な姿勢のみで行うわけではない。得意不得意はあっても、各肢位にはそれぞれの利点も存在する。

 例えば背臥位は下顎が後退しやすく、舌根沈下を起こしやすいというデメリットが存在し、換気量を下げる可能性を高めるが、支持基底面が広く安心・安定の姿勢であるというメリットもあるし、口や鼻が塞がって窒息する危険性も少ない。

 各ポジションの特性と各子どもの特性を考え、どのポジションをどの程度の頻度・時間で行うべきか?について考えなければならない。

 そして、もう一つポジショニングを行う際に重要なポイントがある。療法士のように緊張の強い身体や変形の強い身体に触り慣れていて、体位変換をするのに覚悟の必要のない人間だけが彼らのポジショニングを行うわけではない。家では家族が行うし、介護者や学校の先生が行わければいけない場合もある。

 そのような人たちがやりやすく、安全に体位変換できるというのも重要なポイントである。

 特に腹臥位など介助者が不安を感じていたり、体位変換に手間取ったりすると、その不安や焦りが子どもにも伝わり、上手くポジショニングができないことがある。できるだけ変換しやすいように、また介助者も子どもも安全に姿勢保持ができるような方法(補助具の用意なども含めて)を考案する必要がある。

 以下の本は新生児のためのものであるが、幼児にも応用可能なので参考にして欲しい。

2.呼吸理学療法

 呼吸理学療法は排痰の促通や換気量の向上の為に行われるのが一般的だろう。

 分泌物がどこに貯留し、どのような体位でどのような手法を用いれば排痰しやすいか?を考えた上で介入する必要があるし、肺のどの部分の換気状態が悪いかを知り、その部分に呼吸を促す為にはどのような体位で、どのような手法を用いるべきか?について検討する必要がある。

 手法は成人と大きく変わらないが、胸郭のサイズや動き具合が成人と違うので、徒手的に動かす為の配慮は十分にする必要がある。

 具体的な手法は以下の書籍を参考にされると良いかと。

3.胸郭のモビライゼーション

 こちらも呼吸理学療法の範疇かもしれないが、呼吸だけでなく全体への影響を加味しながら行う必要があると思ったので分けた。

 まず胸郭の運動方向を知り、その運動が十分かどうかを評価する。ROMに制限がある場合は、その原因を分析する必要もあるだろう。

 変形の有無や、その変形が胸郭の運動制限にどのような影響を与えているか?また現在の呼吸を含めた運動が、将来の変形に影響を及ぼす可能性があるなら、その予防はどのように行うべきかなど様々な視点で胸郭のモビライゼーションを行う必要がある。

 胸郭を徒手的に動かす時は呼吸を阻害しないように、呼吸のペースや運動方向に合わせて実施する必要がある。療法士がペースを乱すことにより子どもの呼吸状態が悪化する可能性もあるので十分に注意して頂きたい。

 胸郭関節運動や呼吸筋・呼吸補助筋の運動を促すことで、呼吸へと介入していく手法である。具体的な方法は上記「呼吸リハビリテーション」の書籍に加え、以下の書籍を参考にされたし。

おわりに

 肺がんは、全てのがんの中で一番苦しむと言われている。

 それだけ人間にとって呼吸が阻害されるというのは苦しく、悲惨な状況なのだ。

 重度の脳性まひ児の中には常にSpO2が80を下回るような状況の子どもも居る。あなたも一度パルスオキシメーターをつけた状態で息を止めてみると良い。SpO2が80を下回る状況になるまでにはどれだけ息を止めておかないといけないか、その状況が如何に苦しいか?が分かるだろう。

 彼らの呼吸を改善させることはそれだけで彼らの人生を豊かにする可能性を秘めている。

 今回のエントリーが、現在ご担当されている子どもたちの呼吸を再考し、より楽に生活できるようになるための姿勢ケアプランを再考するきっかけになれば幸いである。

 ってことで、今回はここまで。ほな、また。

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