特別支援教育

アテトーゼ型脳性まひ児へのリハビリテーション

 こんにちは。作業療法士の中野です。

 疫学調査では脳性まひ全体の5〜20%と言われているアテトーゼ型脳性まひだが、臨床では比較的沢山お会いするという印象がある。

 でも、振り返ってみたら痙直型脳性まひ児・者に比べてキャラが濃いのがアテトーゼ型脳性まひ児・者だったなぁと思う。

 つまり、それだけ深く印象に残る為、沢山お会いするという印象になっているだけかもしれない。

 彼らはある程度知的に高い事が多いので、すぐに人を呼びつける。笑

 ボクが重症心身障害児・者施設に勤めていた時も、ボクが通る廊下と反対を向いて座位保持装置に座っているのに、何故か「なぁかぁのぉくぅ〜ん!!」と呼ぶ。よく見たら首が捻れて視野の一部にボクを捉えているのだ。笑

 だから頚髄症になってしまう…。

 今回はそんな愛すべき彼らの臨床像と介入のアイデアについてまとめたいと思う。

アテトーゼ型脳性まひ児の臨床像

画像引用元:SlidShare
画像引用元:SlidShare

 筋緊張のベースは低く、そこからの不随意的な筋緊張の増大、減少により運動のコントロールが難しい状態となっている。また、筋緊張の問題だけでなく、頭部の安定が得られないことでその不安定さが増していることもある。

 人は頭頸部が安定することで体幹、四肢の分離した運動が可能となる。それは正常発達の流れを見ていても分かることだ。

 アテトーゼ型脳性まひ児は頭頸部のコントロールができない(同時収縮で安定させられない)為、その動きに身体が左右されてしまう。

 また緊張性頸反射が強く現れており、反射の影響も彼らの筋緊張コントロールを難しくさせている。

 乳幼児期、背臥位で過ごすことが多い中、頭頸部・四肢を安定させることが難しい事から起こる運動は頭部の床への押し付けである。それで伸展の運動を使って身体を動かすことを覚えていく。ブリッジをしたところから非対称性緊張性頸反射を用いながら寝返りをしたりするのが最初の運動である。この際頸部は安定しておらず、押し付けることで安定を得ている。

 このような運動パターンを学習してしまうため、坐位も立位も不安定で後ろに反り返って倒れるか、反対に頭が前にきた時には突然筋緊張がゆるみ崩れ落ちるか?というパターンになりがちだ。安定して上肢や頭頸部を使うことが難しいので、使いものにならない場合もある。

 下肢は足底からの情報を得る機会が少なく、腹臥位や四つ這いなどでのコントロールが難しいことから発達しにくく、筋力も弱いことが多い。

 頭頸部が安定しないことから眼球運動も頭頸部と分離させて動くことが難しく、頭の動く方向が見る方向となってしまいがち。恐らく彼らはジェットコースターにのっているような視界の変化があるかもしれない。このような状況なので随意的に焦点を合わせるのが困難である。

 反射などを使いながら動作を日常生活動作を獲得する場合もあるが、頭部のコントロールを獲得しているわけではなく、ヘッドレストなどに押し付けながら安定を得ているので首への負担は大きい。頚椎症性頚髄症の発症率がどうしても高くなってしまう。

参考エントリー:アテトーゼ型脳性まひ児・者に多い頚椎症性頚髄症への対策

アテトーゼ型脳性まひ児へのリハビリテーション

画像引用元:Psych Mamma
画像引用元:Psych Mamma

 以上のような臨床像を持つアテトーゼ型脳性まひ児に対して考えられるリハビリテーション介入のアイデアについて以下にまとめたいと思う。

姿勢・運動に対するアプローチ

 痙直型脳性まひ児が身体を一つの塊として使おうという特徴があるのと反対にアテトーゼ型脳性まひ児は全てがバラバラで一体感が無い使い方をしてしまう。それは筋緊張の問題と頭部のコントロールができていないところから起こっている。その為、姿勢を安定させる、対象に保つという経験がしにくい。

 ボク達はまず彼らの姿勢の安定を助ける必要がある。背臥位で非対称性を強めているだけの状態であれば、腹臥位を用いて頭部を安定させるトレーニングを行う必要があるかもしれないし、体幹の安定を得るために座位保持装置とベルトを上手く使いながら上肢を使っていくよう促す必要がある。

 あるいは、道具を使うだけでなく、抱っこやセラピストとの関わりの中で安定を得やすい支えを見つけ、支えた状態での遊びなども姿勢の安定性を学習する上で効果的かもしれない。

 バラバラに動く四肢をコントロールするために、成虫での動作や両手動作の必要な遊びを提示しながら、焦点をあわせる練習も同時に行う。眼と手の協調や、左右の協調を学習することで正中の意識が高まり、安定を得やすくなるだろう。

 それができれば、徐々に体重移動、一側支持への練習へと広げていく可能性があるが、まず正中位での安定性を得るところのトレーニングや、あるいは姿勢を保持した状態での四肢のトレーニングが中心になるだろう。

日常生活に対するアプローチ

 頭部の安定性、上肢のコントロールされた動作を獲得できれば、それが食事動作だったり、机上の動作、更には更衣動作などへと発展させていける。しかし、多くのアテトーゼ型脳性まひ児は拘縮や変形を作り、強めるような一定のパターンで動作を獲得している場合が少なくない。また、頭部の不安定性を押し付けで代償しているので、首への負担が大きく今できている動作が将来的にできなくなる可能性があるというケースが多い。

 まず現状の動作に問題があるのであれば、姿勢から見直していく必要があるだろう。また、無理に自立を促すのではなく、長く健康的に行える動作を再学習するべく、関わっていく必要がある。

 特に食事など、母親や介助者の気持ちになると自分で食べてくれるのにありがたいことはない。しかし、それが本当に本人の為かどうかを深く考える必要があるだろう。

 更衣などは変形が起こると自分で行うことはおろか、介助するのも大変になるので、変形の予防に配慮しつつ、安定した姿勢とコントロールされた運動を促していく必要がある。

母親支援

 変形予防を考慮した育児や発達を促す育児というのは痙直型のお子さんと同じである。

 アテトーゼ型お子さんの場合、特に身体の障害が重度であっても知的にはある程度保たれていることが多い。その為、「できない子」「助けが必要な子」というレッテルを貼って育児するのではなく、健常児の育児と同様「自立を目指した育児」を心掛けてもらうよう働きかける必要がある。

 賢いのに甘い、世間知らずというのは成人のアテトーゼ型脳性まひ者に見られる特徴である。

 親にも、周囲にも子ども、助けが必要な子として育てられてきているから仕方がない。ボクが昔出会ったアテトーゼ型脳性まひ者の中には身体の障害は重度で身体の節々が傷んでいるが、自立して一人暮らしをされている方がいらっしゃった。

 その方のお母様はオラオラ系?でお子さんを自立させようと、決して特別扱いせずに育てられたと聞いた。戦時中だったら難しかったかもしれないが、今は豊富なサービスによってそういうことも可能である。身体の状況に関わらず一人の人間として愛情の中にも厳しさを持って育てる、躾けるという意識が持てるように配慮する必要があるだろう。

おわりに

 発達障害児と関わる上で、必要な視点の一つが「親亡き後をどう生きるか?」というのは一つのテーマである。特に脳性まひのように身体に重度な障害を抱えているケースにおいては日常生活の大半を何かしらの形で援助してもらわなければいけない。

 多くのケースで子どもが先に亡くなるということは考え難い。

 どのように生きていって欲しいか、どういう人生を歩んで欲しいか?両親には早くからそういう認識を持ってもらって関わっていく必要があるだろう。

 また、療法士としても彼らが将来にわたって健康で豊かな生活を送ってもらえる事を意識した関わりを持っていくことが重要だ。

 ってことで、今回はここまで。ほな、また。

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