特別支援教育

重度脳性まひ児の扁平胸郭と風に吹かれた股関節への対策

 こんにちは。作業療法士の中野です。

 今回は特に重度の脳性まひ児、GMFCSの4〜5レベルのお子さんに見られる変形で特有の扁平胸郭と風に吹かれた股関節についてまとめたいと思う。

 これら変形は異常で強い筋緊張の非対称性と、重力に抗しきれず起こってくる変形である。

 特に寝たきりの状態が長くなると、ほぼ全員に起こると言っても過言ではない。この変形をおこなさない事が、その後の彼らの人生を豊かにする手助けになるだろうと思う。

扁平胸郭について

 重度の脳性まひ児の場合、主な過ごし方は臥位である。

 股関節や膝関節の伸展制限もあることから、特に背臥位でいる時間が極端に増える。すると、重力は容赦なく彼らの胸郭に襲いかかる。

 背臥位の胸郭には約7,8kg重の重力がかかっているとされている。また、床からはそれと同等の床反力がかかっていることになる。

 ボク達はその重力に耐え切れなくなると自ら動いて体位を変える。健常の赤ちゃんでも自ら除圧できるし、しんどくなったら泣いて母親に知らせる。そういう対策をしながら、胸郭に変形が起こらないように対処しているのだ。

 しかし、重度の脳性まひ児にはそのしんどさを感じる取ることも難しいし、自ら体位を変えることもできなければ、助けを呼ぶことも困難な場合もあるだろう。

 そして、年月をかけて徐々に胸郭の厚みは減り、扁平化していくのだ。

扁平率の計測

 扁平胸郭の計測はGoldsmith氏の考案した計測法が一般的だろう。

 方法は「Goldsmith Indices® of Body Symmetry ※PDFファイル」を参考にして頂きたい。

 故・今川忠男先生がいらっしゃった旭川児童院では扁平胸郭の定量化に取り組んでおられて、研究発表も沢山されているようなので是非ググってみて欲しい。

 健常成人の男女100名(平均年齢35.44歳)のデータを取ると、平均扁平比率(胸郭の厚さ/幅)は0.77だったとのこと。これがGMFCS5レベルの脳性まひ者15名の平均は0.53だったとのこと。まぁ、健常成人は変形がないから当然だが、健常者と比べるとこれくらいの差があるって事。(参考:理学療法学

 個別でもデータを取ることで、予防の根拠や対策に活かす必要があるだろう。

姿勢ケアのアイデア

 扁平胸郭に対して、それを改善させるようなアプローチ方法は現在存在しない。

 既に扁平化している胸郭の場合、呼吸障害を併発しているケースが多いと思われるので、呼吸理学療法などの対症的なアプローチのみと言える。

 しかしながら、変形の予防や悪化の予防はできると考えられる。

 座位保持装置の導入や、様々な姿勢を取れる工夫で扁平化の予防はできるだろう。また、呼吸リハにて呼吸量が増えれば胸郭の可動性・運動性が向上し、扁平化は治らなくても換気状態は改善する可能性はあるので同時に取り組む必要があると考えられる。

風に吹かれた股関節について

windswept

 風に吹かれた股関節は両側の股関節がどちらか片方へ両方同側へ倒れてしまっている変形を良い、先にも紹介したGoldsmith氏が1992年の論文で「wind-swept deformity」という表現を使ったところから、そう呼ばれるようになった。

 また、この風に吹かれた股関節は股関節だけの変形ではなく、上の写真にあるように骨盤や脊柱、胸郭の捻れ、脊柱の側弯が伴った重複変形であると言える。

 筋緊張が強く、股関節・膝関節の膝関節の伸展制限のある脳性まひ児は背臥位でcrook lying(膝を立てた臥位)になってしまう。しかし、足底が上手く設置できないことや、筋緊張に左右差があること、膝を立てた状態でキープする筋力がないこと、掛け布団で重みがかかることなど様々な要因によって膝がどちらかに倒れることになる。

 その姿勢が常態化することで、風上側(倒れている側と反対側)の股関節脱臼が起こったり側弯を強める原因となったりする。

風に吹かれた股関節の計測

 風に吹かれた股関節の計測もGoldsmith氏が考案した評価法を用いるのが一般的だ。

 こちらも方法は原版をご参照されたし。

参考:A Technique to Measure Windswept Deformity

 扁平胸郭と同様で、しっかり計測しておくことで、個々のケースに対するアプローチの妥当性が検討できたり、新しい手法の検討に役立ったりするだろう。

姿勢ケアのアイデア

 風に吹かれた股関節も徒手的な方法で改善することはあり得ない。

 もしまだ脱臼が起こっていなければ脱臼を予防する対策を取る必要が出てくる。

参考エントリー:脳性まひ児に起こりやすい変形(股関節脱臼と側弯)について

 また、背臥位時に風に吹かれない為の対策も必要だろう。ボクが働き始めた当時は既成品はなく、療法士がウレタンを削って作ったり、ボクが座位保持装置制作業者で勤務していた時にも特注で作ったことがあったが、現在は既成品が発売されている。

 特注するより安いし、左右別々にセッティングすることができるので、個別性も高めやすい。これはオススメ商品。

 また、扁平胸郭に対してもそうだけれど、これらのアイデアは故・今川忠男先生が日本に紹介した方法であり、まずは彼の本で勉強するのが先決だろう。

おわりに

 特に重度になればなるほど、変形のリスクはとても高くなる。

 ボク達は変形に対して為す術がない。だからこそ予防が大切である。

 変形のメカニズムを知り、起こるプロセスを知れば対策することができる。

 座位保持装置や腹臥位保持具などの導入、24時間の姿勢マネジメントでまずは予防することを考えていって欲しいと思う。

 ってことで、今回はここまで。ほな、また。

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