特別支援教育

アテトーゼ型脳性まひ児・者に多い頚椎症性頚髄症への対策

 こんにちは。作業療法士の中野です。

 本日は、アテトーゼ型脳性まひ児・者に多い二次障害である「頚椎症性頚髄症」について治療やリハビリテーションについてまとめた内容をシェアしたいと思う。

 特にアテトーゼ型脳性まひ児は知的障害を併発していない場合が多いことから、「やりたい」という気持ちも強いし、「やり方」を自分であみ出し実用化している人が多い。しかし、その事が将来的にそのアテトーゼ脳性まひ児のQOLを下げてしまうケースがある。そのことを意識したリハビリテーションを提供するためにも知っておくべき重要な知識と言えるだろう。

頚椎症性頚髄症とは?

 頚椎症性頚髄症がどのような疾患か?について整理しておく。

 まず、頚椎症について。頚椎の椎間板変性、骨棘形成、椎間関節の変性、脊柱靭帯の肥厚、さらにこれらの変化にともなって発生する脊椎の不安定性など、頚椎の加齢現象によって疼痛や神経症状が生じた状態である。

 つまり、肩こりなんかで、手に痺れがあるような人は頚椎症の恐れがあると言える。

 頚椎症性頚髄症は、この頚椎症を原因とした頚髄症のことで、頚椎内の脊柱管に狭小化が生じ、内部の脊髄組織が圧迫されることによって、四肢体幹のしびれ、筋力低下、膀胱直腸障などの神経症状が発生した状態を言う。

頚椎症性頚髄症の特徴と治療を動画で学ぶ

画像引用元:YouTube『頚髄症の早期発見と最新治療』
画像引用元:YouTube『頚髄症の早期発見と最新治療』

 非常に詳しく且つ簡単に(恐らく一般向けに話してくださっている)頚椎症性頚髄症を説明した動画を見つけたのでボクがどうこういうより、まずこの動画を見ると勉強になるだろう。埋め込みができないので、リンク先で見て欲しい。

参考:『頚髄症の早期発見と最新治療』 池永稔先生

アテトーゼ型脳性まひ児・者の頚椎症性頚髄症の特徴

画像引用元:YouTube『頚髄症の早期発見と最新治療』
画像引用元:YouTube『頚髄症の早期発見と最新治療』

 基本的に頚椎症は加齢(長年の習慣)に伴った頚椎や椎間板の変性、関節や靭帯の問題によって起こる。

 アテトーゼ型脳性まひ児・者の場合、不随意運動の為、成長期から頚椎の変性が起こりやすい。これはアテトーゼ型脳性まひ児・者の運動特性から当然で、彼らはよく頸部を(床や車いすや座位保持装置などのヘッドレストに)押し付けて上肢・下肢の操作を行う。目的遂行のためには非常に理に適った方法ではあるが、常に頚椎(更にはその中の頸髄)へ圧迫を加える事になる。

 また、発育性に頚椎椎体前後径が長く、脊柱管容積が相対的に小さくなりやすいという特徴も併せ持っている。更には不随意運動の影響により、環軸関節間での亜脱臼が起こるケースもあり、それも脊髄を障害するリスクとなってくる。

 このように、アテトーゼ型脳性まひ児は頚椎症性頚髄症になりやすい特性を持っている。

アテトーゼ型脳性まひ児・者における頚椎症性頚髄症診断における問題

 まず、そもそも四肢麻痺を持っているアテトーゼ型脳性まひ児・者の軽微な状態変化に気づくことは難しい。手足のしびれを自覚するレベルで感じたり、今まで出来ていた日常生活動作ができなくなってから気づくケースが大半で治療開始が遅れてしまうことがしばしばある。

 また、頚髄症が疑われても確定診断するためのMRIも不随意運動の影響で難しく(代替法としてミエログラフィーを行いCTを撮影することで確認している)、更にはアテトーゼ型脳性まひ児・者特有のしゃべり方により医師が病歴や可能性について聞き取りし辛い事も診断の弊害となっている場合があるようだ。

頚椎症性頚髄症に対する治療

 早期発見され神経症状が軽微な状況であれば保存療法(頚椎装具と薬物療法:消炎鎮痛剤や筋弛緩剤、安定剤など)の適応になる場合もあるようだが、大半の場合ある程度神経症状が出てしまった後に受診するケースが多く、手術適応になる。

 手術の具体的内容に関しては上で紹介している動画が詳しいのでそちらを参照にして頂きたい。

 頚椎症性頚髄症が発症してからのリハビリテーションであるが、有効な治療効果があるというエビデンスは現状存在せず、予防的に関わる重要性が伺える。

アテトーゼ型脳性まひ児・者に対する頚椎症性頚髄症の予防的リハビリテーション

画像引用元:YouTube『頚髄症の早期発見と最新治療』
画像引用元:YouTube『頚髄症の早期発見と最新治療』

 上の画像はアテトーゼ型脳性脳性まひ者のX線写真である。通常前彎しているはずの頚椎が後彎しており逆C状態になっているのが伺える。もはや生きているのが不思議なレベルだと思うのはボクだけだろうか。

 しかしアテトーゼ脳性まひ児特有の運動や不随意運動によってこのような変形を引き起こしてしまうのが現状である。

 またこのようになった状態から、徒手療法によって理想的な頚椎の湾曲を取り戻すのは不可能だと言えるだろう。ボク達にできることは予防的関わりのみである。

 では、アテトーゼ型脳性まひ児・者と関わる上でどのような点に注意すべきだろうか。

座位保持装置の早期導入と定期メンテナンス

 ボクは座位保持装置製作メーカーに居た経験から、脳性まひ児に対する座位保持装置の早期導入の重要性をひしひしと感じているし、脳性まひリハビリテーションガイドラインでも推奨されている。

 早期から頸部に負担のかからない姿勢を学習させて、上肢や下肢の操作をする前にまず姿勢を安定させるということを本人に覚えてもらう必要がある。

 もちろん、やりたい!という気持ちを削いではいけない。座位保持装置に座った方がやりやすいと覚えてもらうのだ。

 その為にも業者選びは重要だ。ただただ横倒れしない事だけを目的にした覆いかぶさるようなモールドタイプの座位保持装置を作る業者は論外であることは言うまでもないだろう。

姿勢制御の学習

 上肢や下肢の運動を用いる場合には座位保持装置を使えば良いが、それ以外の全身的な運動も必要になる。歩行する児であれば当然である。

 その為には、姿勢制御系へのアプローチを忘れてはいけない。ただただ道具を使って歩かせる、セラピストが介助して歩かせるという方法を取ると不随意運動は激しくなり、仮に歩けていても頸部への負担を強めることになるだろう。

 姿勢を安定させて、それから歩くという順序を守った関わりが大切だし、あるいはUFOウォーカーやゲートトレーナーのような姿勢保持を代用できるものを用いて出来る限り異常運動を学習させない配慮が必要となるだろう。

セルフコントロール

 アテトーゼ型脳性まひ児・者は知的障害を伴わない場合が多く、仮にコミュニケーションが困難であってもこちらの伝えたいことを理解してくれる場合は多い。

 だから、自分がどういうふうになったら危険で、どういう運動や動作が理想か?というのを頭でわかってもらう関わりも重要だろう。

 また、リラックスできる状況を自ら作り出すためのセルフコントロールまでできるようになればベストだ。リラクゼーション音楽を用いたり、アロマを使ったり、あるいは自律訓練法などを自ら行えるようになると彼らの二次障害リスクは劇的に減るだろう。

 療法士と一緒に過ごしている時間の方が少ないわけだから、自分で自分の身体をコントロールできる方法を身につけてもらうというのは非常に重要だ。

おわりに

 二次障害は療法士の責任で起こる病気である。

 これはボクが小児のリハに関わる上で一番心に留めていることである。

 二次障害は起こらなくても良い障害であり、しかし起こるべくして起こる障害である。療法士の働きかけ一つで予防することもできれば、悪化させることもできる。

 特に小児期の関わりが成人後の状態に大きく関わることを頭に入れながらリハを提供することは本当に大事。

 特にアテトーゼ型脳性まひでは頸髄の問題はほぼ全員が経験する問題だ。だから、子どもの時からそれを意識して関わらなければならないということをこのエントリーをきっかけに再認識して頂ければ幸いだ。

 ってことで、今回はここまで。ほな、また。

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