特別支援教育

脳性まひの原因と、タイプ別障害部位や特徴、症状について

 こんにちは。作業療法士の中野です。

 先日、脳性まひ児のリハに携わる為に最低限知っておくべき知識として、脳性まひの定義と分類について復習した。

参考エントリー:理学・作業療法士なら知っておきたい脳性まひの定義と分類

 今回は、同じく脳性まひ児のリハに携わる為に最低限知っておくべき知識として、脳性まひの原因と、タイプ別の特徴や症状についてまとめたいと思う。

脳性まひの原因

 脳性まひは、概ね1歳までに原因が発生し、症状が現れているものである。

 近年の特徴として、周産期医療の発展に伴い在胎期間24週未満の超早産児の死亡率が激減している。その一方で全体としての脳性まひ発症率が約0.2%程度であるのに対し、在胎期間22〜27週の子どもの脳性まひ発症率は14.6%とされている。

 また、体重1000g未満のいわゆる超低出生体重児については、出生体重が1000g以上の子どもと比較して脳性まひの発生率が5.1〜8.7倍になるというデータも出ている。

 ちなみに満期産児の脳性まひ発症率は0.1%とされているので、脳性まひ児が出生するリスクとして「早産」「低出生体重」というのは大きなリスクになると言えるだろう。

早産・低出生体重の原因とは?

 では、何故早産や低出生体重の出生というのが起こってしまうのだろうか。原因は様々だとは思うが、リスクファクターとして以下のようなものが挙げられている。

  • 子宮筋腫など子宮疾患の既往
  • 妊娠高血圧症候群
  • 前置胎盤
  • 絨毛膜羊膜炎などの感染症
  • 糖尿病や腎臓病の既往
  • 羊水過多、羊水過小
  • 多胎妊娠
  • 高齢出産
  • 喫煙
  • 過労、ストレス
  • 早産歴

参考:こそだてハック

 また、低出生体重児が生まれる原因としては主に早産だが、子宮内胎児発育不全の影響で低出生体重児が生まれることもある。

 日本において低出生体重児が増えている原因としては、周産期医療の発展と、不妊治療の影響による双子や三つ子が増えたことも原因として考えられている。

脳性まひの発生時期別の特徴と原因

 前述の通り、脳性まひは概ね1歳までに起こった脳損傷を原因とする。そして、それは発生時期によって以下のように分類される。

  1. 胎生期(出生前)
  2. 分娩時を含む周産期
  3. 乳幼児期(出生後)

 現状の原因の半数以上が胎児期にあると考えられている。分娩時の異常や何らかの問題によって起こるケースは医療の進歩によって減少傾向にあるが、低出生体重児への医療的ケアが充実している点から出生後の原因が増えてきている。

 以下、各時期における特徴や原因についてまとめておく。

胎生期

 胎内での成長不全や奇形(脳形成異常、小頭症など)、や器質的脳損傷(脳出血、虚血性脳障害)、胎内感染(胎盤を通じて垂直感染:サイトメガロウイルス・風疹など)、母親の薬物中毒などが原因となる。

周産期

 胎児仮死・新生児仮死(生まれる前から仮死状態だったか、出生後に仮死状態になったか?の差。へその緒が首に巻き付いたり、へその緒が先に出てきて酸素が胎児に行かなくなることが原因になったり、胎盤の機能不全、胎児発育不全、前置胎盤、胎盤早期剥離などが原因になることもある)や核黄疸、脳室周囲白質軟化症(PVL)など周産期における脳室や脳室周囲の問題などが考えられる。

 近年では黄疸による脳性まひの発生件数は減少傾向にある。

乳幼児期

 出生後は、脳炎・髄膜炎、脳血管障害(脳出血、もやもや病含む脳梗塞)、出生後の低酸素性脳虚血症、皮質下白質軟化症が原因となる。

タイプ別障害部位と特徴、症状について

画像引用元:Slideshare
画像引用元:Slideshare

 上図の通り脳性まひには大きく分けて4つに分けられる。

  • 痙直型脳性まひ
  • アテトーゼ型脳性まひ
  • 失調型脳性まひ
  • 混合型脳性まひ

 以下、それぞれの障害部位や特徴、症状についてまとめたいと思う。

痙直型脳性まひの障害部位や特徴、症状

画像引用元:SlidShare
画像引用元:SlidShare

 痙直型脳性まひは、『上位運動ニューロン』が損傷された場合に起こり、四肢の伸張反射亢進(痙縮/痙性)を首都する随意運動の障害、湿性異常を特徴とし、脳性まひ全体の70%〜80%を占めると言われている。

 近年、特に脳室周囲白質軟化症(PVL)を原因とする痙直型脳性まひ児が増えているのが特徴である。早産児が増えている現状は先程説明した通りだが、脳血管の発達が未熟で、特に脳室周囲に酸素が供給されないことが原因で起こるとされている。

 PVLは両側で起こる事が多く、その出現範囲によって障害の重さが変わるが、下肢領域に起こりやすいことから両麻痺になることが多いのが特徴で、更に損傷部位が広い場合四肢麻痺となる。

画像引用元:鳥取大学医学部 N教授
画像引用元:鳥取大学医学部 N教授

 上位運動ニューロンは、運動情報を大脳皮質(運動野)から脳幹(中脳・橋・延髄)へ又は脊髄(脊髄前角細胞)を介して下位運動ニューロンに経由するまでの経路をいう。

 上図は上位運動ニューロンの主要経路である皮質脊髄路を表したものである。

 痙直型脳性まひの特徴としては、いわゆる錐体路兆候というものであり上位運動ニューロン障害の特徴と言える。

 上位運動ニューロン障害の特徴は陽性兆候と陰性兆候それぞれ以下のようなものがある。

■陽性兆候

  • 腱反射亢進
  • クローヌスの出現
  • 痙縮
  • 同時収縮(相反神経支配の欠如)
  • 連合反応

■陰性兆候

  • 運動麻痺
  • 神経・筋の弱化
  • 易疲労性

アテトーゼ型脳性まひの障害部位や特徴、症状

画像引用元:SlidShare
画像引用元:SlidShare

 アテトーゼ型脳性まひは、大きくジストニック型脳性まひと舞踏様アテトーゼ型脳性まひに分類される。

 アテトーゼ型脳性まひは大脳基底核及び錐体外路系の損傷により発症し、ジストニック型脳性まひはパーキンソン病のような固縮が特徴で、舞踏様アテトーゼ型脳性まひは不随意運動が特徴である。

 昔は核黄疸が原因のアテトーゼ型脳性まひが多かったが、光線による黄疸治療の進歩により減少した。しかし、低出生体重に伴う低ビリルビン症や脳出血で近年再び増加傾向にある。

画像引用元:わたしが私のお医者さん
画像引用元:わたしが私のお医者さん

 大脳基底核は上図の通り、被殻と尾状核を合わせた線条体と、淡蒼球、視床下核、黒質の総称である。

画像引用元:生理学研究所
画像引用元:生理学研究所

 大脳基底核では皮質からの運動命令に対して、その運動をコントロールする役割がある。例えば、歩行時、錐体路からは下肢の運動の司令が出るが、大脳基底核では、腕振りや体幹の回旋、骨盤の運動などに対して働いていると考えられている。

 上図のように、皮質からの命令を受け、最終的に視床から再び皮質へとフィードバックしている経路である。その経路を錐体外路という。(下図参照)

画像引用元:脳腫瘍と共に生きる
画像引用元:脳腫瘍と共に生きる

 知らなかったんだけど、最近はあまり錐体外路って言わないの?錐体外路っていういわゆる神経経路は解剖学的に存在しないことが理由らしいのだけど、ボクが学生の頃もそうやって習ってたのかな…。全く覚えてない。ってことで、錐体外路障害とか錐体外路疾患という場合には用いるけど、いわゆる経路を表す言葉としては使わなくなりつつあるのだとか。

 ジストニック型は淡蒼球・黒質の損傷で起こり、筋緊張は亢進した状態が持続し(固縮)、運動は殆ど起こらない。

 舞踏様アテトーゼ型は線条体(被殻、尾状核)の損傷で起こり、ベースの筋緊張は低く(フロッピーインファントと言われグッタリしたような姿勢が特徴)、不随意運動(不随意に急激に筋緊張が更新する)が特徴である。痙直型が可動域の最終域での運動が困難なことに比べ舞踏様アテトーゼ型は反対に可動域の中間での運動が困難で、中間位で保持することなども苦手なことが多い。

 皮質が損傷されていないので知的な障害を併発することは少ないが、基底核は認知面や情動とも深く関わっており、認知面発達遅滞や感情のコントロールが難しかったりすることもある。

失調型脳性まひの障害部位や特徴、症状

画像引用元:SlidShare
画像引用元:SlidShare

 失調型脳性まひは、小脳(もしくはその伝導路)の損傷によって起こる。小脳から筋紡錘への抑制が外れてしまうことで筋緊張は低くなることが多く(弛緩型とも言われる)、筋のコントロール(細かい位置や繰り返し(リズムのある)の運動調整、スピードの調整、力の調整)が難しかったりバランスを取ることが苦手(ワイドベースな歩行になりやすい)なことが多い。振戦が起こることもある。

 また、筋を上手く使えないことから筋の発達自体が遅れ、筋は弱化している。

画像引用元:wikipedia
画像引用元:wikipedia

 上図のように、大脳の後下方に位置しており、運動のコントロールやワーキングメモリー(特に微調整して合わせるような場合)に関与したり、皮質での記憶をコピーして保持するという機能も持っている。

混合型脳性まひの障害部位や特徴、症状

 混合型は以上の3つの内2つ以上が合わさった形であり、損傷部位が広くなればなるほど混合しやすい。

 混合した場合、全ての特徴が合わさり、痙直型とアテトーゼ型の混合型はベースの筋緊張は高く、そこからの不随意運動あるという形になる。

 混合型の多くは痙直型とアテトーゼ型の混合である。それはそれぞれの障害部位の位置を考えれば当然で、小脳だけ離れているから、小脳とどこかが損傷するケースは稀である。

タイプ別動作の特徴

 以下、YouTubeにアップされていた各タイプの動画を載せておく。

 前述した特徴や症状がどのように現れているか比較しながら見ると、観察眼も養われるし、治療アイデアも浮かぶのではないだろうか。

痙直型脳性まひ児の動作

アテトーゼ型脳性まひ児の動作

失調型脳性まひ児の動作

おわりに

 今回も教科書的な内容を復習したが、それを実際の動作や、担当しているケースと結びつけて考えるとガテンが行ったり、理由が分かったり、治療アイデアが思いついたりする。

 先日から基本の基本についてまとめていっているが、臨床に居た頃には気付かなかった視点だなぁと思う。

 多分、ボクブランクあるけど、以前より良い治療ができるようになっているんじゃないかな。

 ま、それは実際やってみてからじゃないと分からないけどね…。

 ってことで、今回はここまで。ほな、また。

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