特別支援教育

脳性まひ児に起こりやすい変形(股関節脱臼と側弯)について

 こんにちは。作業療法士の中野です。

 脳性まひ児のリハビリテーションにおいて、「変形を予防する」というのは彼らの長い人生をより豊かなものにしていくという観点において非常に重要であるし、それを無視する療法士など居ないと思う。

 何故予防が大切か?それは起こってしまった変形を改善させることはかなり難しいからだ。(もちろん改善例もあるが)

 変形の原因を知り、その対処法を知ることで脳性まひ児達の姿勢を24時間体制でケアすることができ、変形の予防に繋がる。

 そこで、今回は特に脳性まひ児に多い股関節脱臼と脊柱側弯の予防について書きたいと思う。

股関節脱臼について

画像引用元:脳性麻痺・痙性麻痺による股関節脱臼に対しての骨手術について
画像引用元:脳性麻痺・痙性麻痺による股関節脱臼に対しての骨手術について

 健常児の股関節も生まれたばかりの状態では未熟であり、体幹を支えるだけの力も無ければ形状も成人のものとは違っている。

 しかし成長に伴い、股関節周囲の筋肉が発達し、四つ這いなどを通じて股関節を発達させていき、立位・歩行を経て成人の股関節の形状へと変化していく。

 脳性まひ児の場合、この健常児が経験する股関節発達のプロセスが欠如している場合がある。

 また、筋緊張の異常(腸腰筋や内転筋、ハムストリングスなど)に伴う異常姿勢で股関節の屈曲拘縮、大腿骨のの過大前捻が起こったり、股関節内転、膝伸展を取る時、拘縮したハムストリングスは脱臼に関与し大腿骨頭を臼蓋の外へ押し出す方向に働いたりする。

 股関節脱臼により、股関節の拘縮がひどくなったり、あるいは変形性股関節症を引き起こしやすくなり、疼痛や更衣動作や清拭などが困難になったりするという不具合がある。

股関節脱臼の原因

 脳性まひ児の場合、前述したように正常な股関節の発達が阻害され、且つ異常筋緊張に伴う内転・伸展傾向であったり、ハムストリングスの拘縮によるところが大きい。

股関節脱臼に対する治療

 脳性麻痺児の股関節脱臼に対しては手術療法が進められているが、手術時の年齢やGMFCSによっては良好な経過が得られているようだ。(参考:Evaluation of conventional selection criteria for psoas lengthening for individuals with cerebral palsy: a retrospective, case-controlled study.

 また、近年ボツリヌス療法に関する報告も増え、一定期間は効果的であるという報告がある(参考:Comparison of Botulinum Toxin Type A Injection and Soft-Tissue Surgery to Treat Hip Subluxation in Children With Cerebral Palsy)反面、長期にわたる調査でボツリヌス療法の効果は限定的だという報告もあり、その効果については不明確なままである。(参考:The impact of botulinum toxin A and abduction bracing on long-term hip development in children with cerebral palsy.

脊柱側弯について

画像引用元:慶応義塾大学病院
画像引用元:慶応義塾大学病院

 脊柱側弯とは、脊柱が側方に曲がり、多くの場合ねじれが伴っている場合が多いということは言うまでもないだろう。

 脊柱側弯は多くの脳性まひ児に見られる合併症であるが、その頻度に関して明確な報告がないのが現状である。ただ、四肢麻痺で且つ麻痺が重度のケースにおいて合併率は高いとされている。

 側弯により、姿勢保持や日常生活、介護が難しくなるなどの問題が引き起こされるが、それ以上に消化器系や呼吸器系の問題がより問題視される。

脊柱側弯の原因

 特に脳性まひ児の側湾においては、筋緊張や運動の左右差、固定的な姿勢によって起こる。また以下の場合、側湾は更にひどくなると言われている。

  1. 成長期
  2. 入院時
  3. 両親の不仲

 成長期においては急激に骨や筋が成長するため非対称が強くなる為、側湾がひどくなる。

 入院時、特に手術後などは可能な姿勢が限られることから側湾が起こりやすくなる。

 知的障害が重度の子どもであっても家族の一員であることは変わりなく、周囲の様子に関しては(ある意味健常児よりも)敏感である。その両親のピリピリした状況を感じ取って緊張を強めることで側湾がひどくなると言われている。

脊柱側弯の治療

 装具や座位保持装置による保存療法や手術が適応される。

 装具や座位保持装置は、個別性が高く、また装具や座位保持装置の質にも左右されるため明確なエビデンスはないものの、質の高い装具や座位保持装置は脳性まひ児の側弯の進行を止め、改善されるケースは経験的に知られている。

 手術の適応になる場合もあるが、こちらも脳性まひという疾患の多様性ゆえ明確なエビデンスが得られていないのが現状であるものの、児の状態と術式がマッチすれば改善に役立つケースもある。

脳性まひ児の変形予防

 股関節脱臼は、姿勢のコントロールによってコントロールできるという報告がある。(参考:“Postural Management” to prevent hip dislocation in children with cerebral palsy.

 また、側弯の予防も装具や座位保持装置によって進行を止めたり予防できるという報告も存在する。

 日本ではまだ体系的な変形予防法は明確にされていないし、エビデンスも出ていないが、故・今川忠男先生の24時間姿勢ケアが一番有効な方法であるとボクは考えている。

 その詳細をここで書くことはできない。股関節脱臼や側弯は人によってパターンが多岐にわたるからだ。

 共通して抑えておきたいポイントは、姿勢のバリエーションを増やすこと、運動のパターンを増やすことは重要だ。24時間で様々な姿勢を取り、仮に寝たきりの状態であっても頻繁にポジショニングを変え、座位保持装置などを用いて姿勢を変換する機会も持つことが重要である。

 積極的に児の姿勢管理に関わることで変形は予防していけるだろう。

おわりに

 今回、このエントリーを書くに当たり、様々な論文を参考にさせてもらったが、全てにおいて言えるのが治療は難しいということだ。

 また、様々な治療が検討され、中には成果を上げた治療もあるが、エビデンスレベルといしては低いのが現状のようである。

 それらを考えると冒頭で述べたようにやはり予防することが一番重要であると言えるだろう。

 脳性まひ児のリハビリテーションに携わる療法士は、是非とも担当している子どもに変形を起こさせないよう、しっかりとマネジメントして頂きたいと思う。

 ってことで、今回はここまで。ほな、また。

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