評価と治療

ボバースコンセプトに基づく姿勢制御系へのアプローチ

 こんにちは。作業療法士の中野です。

 ボバースコンセプトにおいて、姿勢制御に関する知識は最もベーシックで、重要なものである。

 姿勢制御が働かない状態での随意運動には、必ず代償が起こり、クライアントは間違った動作、機能的でない動作を学習し、一時的に機能獲得に至ったとしても数年後、その動作を失う可能性を秘めたものになるだろう。

 ボク達はセラピストとして、いずれ失うと分かっていながら既存の方法を放置するのか、あるいは正しい動作を再学習させるかを選択することができる。

 もちろん場合によっては、代償的な動作であっても必要な場合もあるかもしれないが、多くの場合は代償のない機能的な動作の獲得を目指したいはずである。

 今回はクライアントにとって効率的で代償のない機能的な動作獲得のベースとなる姿勢制御へのアプローチ方法についてまとめたいと思う。

姿勢制御システムを考える

posturecontorol

 上の図にある通り、姿勢制御システムは良好なオリエンテーションの元に抗重力伸展活動での安定を得ることができる。

 そして、その条件としては下の図のように正しいアライメントがベースとなり、その上での予測的な姿勢制御系(feedforward制御)と外力に対する姿勢制御(feedback制御)の双方が働かなくてはならない。

posture

 姿勢制御系に対してアプローチする際には、まず正しいアライメントを作り、その上で予測的な姿勢制御系が働きやすいよう支持基底面内にCOM(Center of samm:質量中心)を高くキープするようにしなければならない。

 そのことで、正しいオリエンテーションが得られ安定性を得ることができるようになるのだ。

1.正しいアライメントを作る

 正しいアライメントとは、抗重力伸展位である。

 立位であれば、足底から重力と床反力がぶつかることで抗重力伸展をする方向が分かる。

 その為には足底がしっかりと設置し、脛骨が垂直になり、腹筋と背筋の同時収縮が起こった状態で胸郭を持ちあげなければならない。

 脳卒中後の片麻痺であれば麻痺側の下肢の支持性が失われていたり、体幹の支持性が乏しかったり、脳性麻痺児であれば両側に支持性が失われているかもしれない。

 往々にして、股関節屈曲位で固めCOMを下げるようになっている。これは安定を得ようとしている肢位ではなく、固定しているだけ(動的なバランスではなく、静的なバランスを取ろうとする)の戦略である。

 まず、正しいアライメントを作る所から始めるが、足底がしっかり設置できるように、体幹を抗重力位で支持できるよう何かしらの支えが必要かもしれない。それはセラピストが介助できる場合はセラピストが行い、物で代用できれば物を使い、家族など手伝ってくれる人がいれば家族にも協力してもらう必要があるだろう。

 何にせよ、まずは正しいアライメントを作ることが重要である。

2.予測的な姿勢制御を促通する

 予測的な姿勢制御系を働かせいようと思うと、正しいオリエンテーションが必要である。

 正しいオリエンテーションとは、例えば立位であれば足底からの情報の獲得が必要になる。しかし、麻痺のある下肢などではその情報が十分に感知できないことがある。

 その際には、足底で情報を感知できる状態をセラピストが作ってあげる必要が出てくる。

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 上図の左にあるように予測的な姿勢制御に働くのは皮質橋網様体脊髄システムや皮質延髄網様体脊髄システムである。

 これらが支配するのはインナーマッスルで、足底においては足底の内在筋である。その内在筋を活性化させることにより、適切なオリエンテーションを受ける準備ができる。

 セラピストが足底内在筋に対して刺激を与え、足底に床反力という情報をキャッチさせる準備をすることが重要だ。

 足底の準備ができれば、下腿三頭筋の働きを促通して…というように下から上へ介入していくのが一般的である。

3.FeedBack制御システムを促通する

 予測的な姿勢制御(FeedForward制御)が出るようになったら、次はFeedback系の促通である。

 脳卒中後の片麻痺クライアントや、脳性麻痺児の多くのは足関節での戦略が苦手であり、BOSに重心を留めるために股関節の戦略を使いがちである。

 その股関節の戦略を使うのはオリエンテーションが不適切だからであるから、予測的な姿勢制御系が働けば解消してくるはずだ。その状態で次は足関節の戦略を誘発しなければならない。

 立位であれば、BOS内で重心の前後の移動を起こし、それに足関節の背屈・底屈で対応させるのだ。

 背伸びをするような運動を促すかもしれないし、踵に加重した状態で股関節を屈曲させないようにするかもしれない。

筋を刺激するということ

 例えば足底の内在筋に対して刺激を加えるときにどのようにすべきか。

 むやみやたらに足底を押したりしてもそれは良好な刺激ではないかもしれない。

 特定の筋が引き伸ばされる母指と4指を分け、各骨間筋を刺激して指を一本ずつ引き延ばすような刺激が理想的である。

 けっしてごちゃごちゃ触ってわいけないし、足指をまとめて触るようなことはしてはいけない。まとめて触ると、足が一つの塊だという情報として学習され、選択的な収縮ができなくなってしまうのだ。

 内在筋を刺激し、準備したら外在筋へアプローチする。例えば足なら下腿三頭筋となる。

 腓腹筋は内側と外側に分かれている事を知って触れるべきだし、そうしなければやはり腓腹筋も一塊のものであると学習されてしまう。腓腹筋が一塊として活動してしまうと母指側・小指側という選択的な荷重が難しくなってしまうのだ。

 これら解剖学的な特徴を注意しながら筋を刺激していく必要がある。

おわりに

 姿勢制御系へアプローチするというのは、神経系の知識を知った上で解剖学な知識に基づいた介入が必要になってくる。そしてそれを機能的な動作獲得に繋げる為には生体力学な知識も重要となってくる。

 姿勢制御系への介入は、多くの複雑に絡んだ情報を元行われるので、頭のなかは恐らく常にフル回転となるだろう。

 しかし、それをしなければクライアントの動作は代償を用いたものになったり、非効率的ものになる。

 姿勢制御系の能力を上げることは、クライアントのできることを増やすことに直結する。

 複雑な知識が必要だが、是非とも復習して頂きたい内容だ。

 ってことで、今回はここまで。ほな、また。

追伸…ボバースコンセプトに関するエントリーまとめました

 ボバースコンセプトに関する内容をまとめたので、他にも知りたい方は是非参考にして頂きたい。

参考エントリー:ボバースコンセプトの概要と評価・治療方法に関するまとめ

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