雑記

嗅覚刺激と記憶の関連性を用いて、運動を再現できるか?

 こんにちは。作業療法士の中野です。

 嗅覚が記憶と密接に関連していることはよく知られた話である。

 受験勉強は嗅覚刺激と共に行い、試験の時に同じ嗅覚刺激を与えることで記憶が想起されやすくなるとのこと。

図引用元:ニッスイ
図引用元:ニッスイ

 ニッスイさんでは匂いに関する研究がされていて、チョコレートの香りが記憶しやすいらしい。

 匂いが記憶を想起するというのは、古くはプルースト効果と呼ばれ、現在でも様々な研究がされている。

 今回は、嗅覚刺激と同時に獲得した運動を同じ嗅覚刺激を得た際に想起されるか?という検討をしてみたい。

重症心身障害児・者への治療の応用

 重症心身障害児・者を特に在宅で介護している場合、困ること・不安なことの一つが過剰な筋緊張による苦しさ(呼吸困難感も含めて)である。

 理学・作業療法士の介入によってリラクゼーションし、排痰を促し、呼吸をしやすくするというのは、ほぼ毎回行うアプローチの1つであろう。

 しかし、お母さんは介護だけでなく、お母さんとしてのその他の仕事も妻としての仕事もある。子どもの為に胸郭のリラクゼーションをしている時間はない。

 また、集中して別の仕事をしていても、人工呼吸器のアラームに呼びだされ、吸引をするなんて事もザラだろう。

 このような状況を限りなく少なくするために、例えば療法士が胸郭のリラクゼーションを行い、呼吸が深くなる過程において、アロマなどで嗅覚刺激も同時に与えることで、その嗅覚刺激と一緒に筋緊張が落ち着いている状態、深く呼吸ができている状態を学習する事ができれば、以降嗅覚刺激のみでその運動が想起され、筋緊張が落ち着き、呼吸が深くなるのではないか?と思ったのだ。

脳性麻痺児の歩行能力を嗅覚刺激で上げることはできないか?

 ロボットによる歩行訓練と運動学習の関連については、近年急速に研究が進んでいる。

 ロボットスーツHALは保険適応商品となったし、藤田衛生保健大学ではTOYOTAとタイアップしてロボット長下肢装具(表現が適切かどうかは知らないけど…。ごめんなさい)を研究、実用化を目指しているとのこと。

 しかし、その手の商品を使ってリハを行えるのはまだまだごく一部。

 多くの病院・施設では従来の歩行訓練が行われているだろう。でも例えば、苦手な立脚初期を嗅覚刺激とともに練習することで、次に嗅覚刺激と共に歩行した際上手に行えたりしないだろうか?と思うわけだ。

 練習したことを嗅覚刺激によって想起されれば、歩く前には嗅ぐという習慣を身につけることで上手に歩けるかもしれない。

学習障害児や注意欠陥多動性障害児の集中力を高めることはできないか?

 彼らは何も全ての作業に対して集中力を欠くわけではない。

 集中できる環境、状況を療法士が知り、その作業を行う際に嗅覚刺激と共に実施する。

 すると、何か作業を行う前にその嗅覚刺激によって集中して作業を行うということを想起できないだろうかと思うのだ。

 香りには、集中力を高める類のものがあるというのは、アロマ研究においては既に言われていることだが、まだまだエビデンスは乏しい。

 それよりも、集中して何かを行うという状況を嗅覚刺激によって想起するということの方が有り得そうだとボクは考えている。

おわりに

 こんな風に、既存のリハをより良い物に変えていくというアイデアを実践するというのも、科学の発展のお陰である。

 かつては民間療法だとか、代替療法だとか言われ科学的根拠がなかった経験も、fMRIなどにより、脳機能的にどうか?ってのが分かる時代となった。

 嗅覚と記憶の関連についても、現代では明らかだ。

 それをボク達は特に運動学習という分野に対して用いる事が望まれる。リハとは極論、運動学習のだからね。精神障害であってもそうでしょ。行為障害ってのは運動の障害なんだから。

 で正しい、あるいは望ましい行為(運動)ってのは運動学習によって獲得できるわけだ。

 で、運動学習も同じ記憶なわけで、その記憶を想起するのに嗅覚刺激が有効なんだから、リハで提供する運動を学習してもらうっていうのは理論的にはありな話だと思うわけ。

 もちろん、その為にはリハで理想の運動を実践させるという大前提があるのだけれど…。

 さておき、そういう研究を今後ボクもやっていこうと思うので、興味のある人は是非とも試してみて欲しい。

 ってことで、今回はここまで。ほな、また。

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