評価と治療

PNFにおける肩甲帯/骨盤帯パターンの種類・方法・注意点など

 こんにちは。作業療法士の中野です。

 本日は、肩甲帯と骨盤帯のパターンについて復習したのでシェアしたいと思う。

 肩甲帯と骨盤帯のパターンは個人的には最もよく使うパターンで、使いやすいパターンだと思う。肩甲骨と骨盤は姿勢コントロールや運動の基礎となる部分であり、その運動性や安定性を促通をする上では非常に重要だ。

 また腹部との距離が近いので、クライアントに負担なく腹部を使わせることができるのも特徴だ。

肩甲帯パターン解説に当たり基本事項

 PNFを少しでも学ばれた方にとっては当たり前なのだが、解説に当たりいくつか基本事項を説明しておく。

 肩甲帯パターンについて上肢や下肢同様、パターンの名称は運動の最終肢位を記載している。

 肩甲帯のパターンを用いる際は、上肢を体幹上で固定して(上肢の運動が入らないように)注意して行う。

肩甲帯パターンを用いる理由

 肩甲帯パターンは以下のような目的で用いる事ができる。

  • 肩甲帯の運動性と安定性向上
  • 肩甲帯の運動を伴う機能的動作(ADLなど)の学習
  • 背筋・頸部筋の筋力強化
  • 上部体幹の運動促通、回旋の促通
  • 弱い上肢へのイラデーション
  • 肩甲帯筋群のリラクゼーション
  • 肩甲帯筋群、肩の疼痛除去

肩甲帯パターンのバリエーション

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 肩甲帯の運動は以下の3つの運動方向でパターンが構成されている。

  1. 挙上ー下制(矢状面上の運動)
  2. 内転ー外転(水平面上の運動)
  3. 上方回旋ー下方回旋(前額面上の運動)

 バリエーションは以下の4種類。

  • 前方挙上ー後方下制
  • 前方下制ー後方挙上

 見たままだが、前額面よりも前方にあるか、後方にあるか、肩の水平線よりも挙上位にあるか下制位にあるか?の4パターンである。

肩甲帯パターンの方法

 以下に肩甲帯の4つのパターンについて解説する。

前方挙上ー後方下制

 まず、前方挙上ー後方下制パターンについて解説する。(動画は43秒頃まで)

1.前方挙上パターン

開始肢位 側臥位で肩甲骨を後方下制(下制ー外転ー下方回旋)方向へエロンゲーション
マニュアルコンタクト 両手を重ねて肩峰へコンタクト
遠位部の運動 全ての運動要素が同時に起こる。
バーバルコマンド 開始時:肩をこめかみに近づけるように動かして!運動時:もっと寄せて!

2.後方下制パターン

開始肢位 側臥位で肩甲骨を前方挙上(挙上ー内転ー上方回旋)方向へエロンゲーション
マニュアルコンタクト 両手を重ねて肩甲骨下角(母指を肩甲骨の内側縁、4指を外側縁)へコンタクト
遠位部の運動 全ての運動要素が同時に起こる。
バーバルコマンド 開始時:肩甲骨の先(下角)を、反対の股関節の方へ近づけてきて!運動時:もっと寄せて!

前方下制ー後方挙上パターン

 次に、前方下制ー後方挙上パターンについて解説する。(動画は43秒頃から)

1.前方下制パターン

開始肢位 肩甲骨を後方挙上(挙上ー外転ー上方回旋)方向へエロンゲーション
マニュアルコンタクト 両手で肩峰をパックするようにコンタクト
遠位部の運動 全ての運動要素が同時に起こる。
バーバルコマンド 開始時:肩を反対の股関節に近づけるように動かして!運動時:もっと寄せて!

2.後方挙上パターン

開始肢位 肩甲骨を前方下制(下制ー内転ー下方回旋)方向へエロンゲーション
マニュアルコンタクト 両手で肩峰部をパックするようにコンタクト
遠位部の運動 全ての運動要素が同時に起こる。
バーバルコマンド 開始時:肩を後頭部近づけるように動かして!運動時:もっと押し上げて!

骨盤帯パターン解説に当たり基本事項

 肩甲帯同様、名称は最終肢位で記載される。

 肩甲帯のパターンでは上肢の影響に注意したように、骨盤帯のパターンでは下肢の影響に注意する。

骨盤帯パターンの利用目的

 骨盤帯のパターンは以下のような目的で使用される。

  • 骨盤帯の安定性と運動性の向上
  • 骨盤帯の運動を伴う機能的動作(ADLなど)の学習
  • 腹筋・背筋の筋力向上
  • 下部体幹の運動促通、回旋の促通
  • 弱い下肢へのイラデーション
  • 骨盤帯筋群のリラクゼーション
  • 骨盤帯、下肢の疼痛除去

骨盤帯パターンのバリエーション

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 骨盤帯の運動パターンは以下の3つの運動で構成される。

  1. 挙上ー下制(前額面上の運動)
  2. 内転ー外転(矢状面上の運動)
  3. 前傾ー後傾(水平面上の運動)

  バリエーションは以下の4パターン。

  • 前方挙上ー後方下制
  • 前方下制ー後方挙上

骨盤帯パターンの方法

前方挙上ー後方下制

 まずは前方挙上ー後方下制パターンについて解説する。

1.前方挙上パターン

開始肢位 骨盤帯を後方下制(下制ー外転ー前傾)方向へエロンゲーション
マニュアルコンタクト 両手を重ねて上前腸骨棘へコンタクト
遠位部の運動 全ての運動要素が同時に起こる。
バーバルコマンド 開始時:骨盤をおへそに近づけるように動かしてください!運動時:もっと近づけて!

2.後方下制パターン

開始肢位 骨盤帯を前方挙上(挙上ー内転ー後傾)方向へエロンゲーション
マニュアルコンタクト 両手を重ねて坐骨へコンタクト
遠位部の運動 全ての運動要素が同時に起こる。
バーバルコマンド 開始時:おしりのでっぱり(坐骨結節)を反対の膝めがけて動かして!運動時:もっと押して!

前方下制ー後方挙上

 次に前方下制ー後方挙上パターンについて解説する。

前方下制パターン

開始肢位 骨盤帯を後方挙上(挙上ー外転ー前傾)方向へエロンゲーション
マニュアルコンタクト 両手で腸骨稜をパックするようにコンタクト
遠位部の運動 全ての運動要素が同時に起こる。
バーバルコマンド 開始時:骨盤のでっぱり(ASIS)を反対の膝の方へ押し下げて!運動時:もっと押し下げて!

後方挙上パターン

開始肢位 骨盤帯を前方下制(下制ー内転ー前傾)方向へエロンゲーション
マニュアルコンタクト 両手を重ねて腸骨稜へコンタクト
遠位部の運動 全ての運動要素が同時に起こる。
バーバルコマンド 開始時:腰のでっぱり(腸骨稜)を反対の身体の後ろへ持ち上げてきて!運動時:もっと持ち上げて!

肩甲帯と骨盤帯のパターン

 肩甲帯と骨盤帯を同時に働かせることにより、腹筋や背筋をより効果的に働かせることが可能となる。

1.肩甲帯前方下制と骨盤帯前方挙上

 肩甲帯と骨盤帯を近づけるように動かす。また、片麻痺患者の寝返り(麻痺側下の側臥位から腹臥位方向へ)を促通する際などにも利用できる。

2.肩甲帯後方挙上と骨盤帯後方下制

 肩甲帯と骨盤帯を引き離す方向に動かす。片麻痺患者の寝返り(麻痺側下の側臥位から背臥位方向へ)を促通する際などに利用できる。

おわりに

 肩甲帯と骨盤帯のADLへの使用はかなり多い。頸部の安定、寝返りなど基本動作から始まり、歩行や多くのADLに肩甲帯、骨盤帯の動きが関与している。

 そして、(健常者も含めて)多くの障害者は肩甲帯・骨盤帯の安定性を欠いている場合が多い。その場合、肩甲帯・骨盤帯の安定性・運動性を高めるだけで上・下肢の運動が促通されることもある。

 非常にクライアントの可能性を引き出すパターンなので、実践で試して欲しいと思う。

 ってことで、今回はここまで。

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