雑記

「障害児産んだら人生終わったから、日本死ねっつーか死にたい」の感想

 こんにちは。作業療法士の中野です。

 ボクは療法士の中でもかなりネットサーフィンしている方だ。何の自慢にもならないが、多少情報通になる。

 ま、そんなネットウォッチャーじゃなくても知っている話題がこれ。

参考:保育園落ちた日本死ね!!!

 この匿名ブログに関しては、様々な言及記事、スピンオフ記事、何なら政治家の問題発言まで生み出した。テレビでも放送されたので知っている人も多いだろう。

 ちなみにうちの子たちも待機児童。上の子は何とか幼稚園に入れたけど幼稚園浪人の危機に陥っていたからギリギリ。下の子は未だに自宅育児。来年は兄弟枠で幼稚園に入園できると思うけど…。

 さておき、スピンオフ記事の一つに以下のような記事があった。

参考:障害児産んだら人生終わったから、日本死ねっつーか死にたい

 これについて作業療法士のボクから色々アドバイスしてみたいので、同じような気持ちのお母さんがいらっしゃいましたらご参考まで。

ブログの内容とボクの意見

 以下、ブログを引用しながら、ボクのアドバイスを書いていこうと思う。

お金のこと

私は数ヵ月前に第一子を産んだ。

私20代、夫30代。

二人とも正社員だけど給料は高くない。

まあごく普通の夫婦。

共働きならなんとか子育てしながらやっていけると思った。

だけど、生まれたのは口からミルクを飲むことも息をすることもままならない重度の障害児だった。

 給料は高くない…。どの程度か分からないけど世帯年収で550万くらいかな。仮に奥様がしばらく働けないとして300万ほど?

 でも、障害児育児において一番の問題はお金じゃないと思うよ。言い方は悪いけどどちかといえばお金的には問題が少ないと思う。重度の障害児ってことだが、どこまでの重症児かわからないけど、かなり手厚い支援を受けられるからお金の心配はしなくて良い。

 考えるべきは、『自分たちより長く生きる子ども』を如何に育て、将来を保証するかなんです。

保育園のこと、母親が働くこと

医師や保健師からは、こういう状態の子供を産んで働いている母親はいないと言われた。

人工呼吸器をつけていたり、鼻に入れたチューブから栄養を取っている子はどこの保育園でも預かってもらえない。

 追記版には書かれているけど、フローレンスのアニーが『障害児母の正社員雇用率は5%程度』と、重度障害児の為の訪問保育を提供している。ボクも来年やりたい事業の一つ。

 また、仮に重度じゃなくても障害児保育園ヘレンもフローレンスさんはやっている。ボクもやりたいな。大阪には(多分)現状ない。

 ブログを書いた人がどこにお住まいか分からないけど、東京のアニーなりヘレンのお近くにお住まいなら何とかなるね。

 そしてね、もう一つ言いたいのは5%の人は正社員雇用されてるってこと。そういう特別なサービスが無くても何とかなるんじゃないのかなぁ…。

手当のこと

みんな子供の介護をしながら、手当てをもらって暮らしている。それが当たり前だって。

手当てといっても給料と比べればわずかな額だ。

 手当って言葉がどこまでか…の問題もあるけど、もし文字通りの重度障害児だったとしたら身体障害者一級が取得可能で、障害者年金が受け取れる。

 額は書かないが、けっこうな金額がもらえる。(あまり言いたくないけど、ボクが以前勤めていた所のとある障害児の母親は「○○ちゃんのお陰で家が建ったわ〜www」と喜んでいたそうな…。はぁ、だから障害者福祉が発展しねぇんだよ。)

兄弟を産むリスク

片働きになれば、今の家には住めなくなるし相当切り詰めた生活をしなければならない。次の子を持つのも難しい

 今までの説明からそれは不可能じゃないことがわかると思う。

 ただし、やはり妹ちゃん・弟くんを産むのはリスクがある。彼らの健全な成長を願うならかなり慎重な対応が必要だ。ボクの同級生にも障害児の兄弟が居たが、卒論のテーマが『障害児の兄弟のケア』だった。それくらい、まぁ大変だってこと。

 問題はお金じゃなくて、兄弟の成長についてだよ。

全てを無くすのか?

だったら、死のうかなって思ったよね。子供と一緒に。

就活をけっこう頑張って入った会社だったんだよ。

妊娠中、子育てに夢を描いて選んだ家だったんだよ。

そういうの全部なくして、残りの人生、親を親と認識できるかも分からない子の介護をするのかと思うと、絶望が凄い。

子供が可愛くないわけじゃない。でも失ったものが大きすぎる。

 死のうかな?って思う気持ちはわからなくもない。ボクの子どもは幸いにも(多分)健常で生まれてきた。だからほんとうの意味ではわからない。でも障害児に関わる仕事をしている以上、やはり子どもの障害有無についてはかなり気がかりだった。何しか健常で生まれてきてくれと願った。

 ただ、別に仕事を失うかどうかは職場次第だし、家のローンと賃貸の家賃って殆ど変わらないから障害児が生まれたからって失うとは限らない。

 うちの嫁さんは、障害児産んだわけじゃないけど、産休も許されず退職した。(これって労働基準法違反だよね…。)

 そして、この著者が出産後数ヶ月ってことだけど、まだ失ってないんじゃない?育休中じゃないの?障害児産んだってバレてもうクビになった?だとしたら訴えることができるレベルだよ。

 復帰した時に、働ける状況じゃなければ仕方ないけど育休中にはクビにならんでしょう。

障害児が生まれる可能性について

あとさ、出生前診断ってよく話題になってるけど、分からない障害の方が圧倒的に多いんだよね。

特に呼吸器とかが必要になるような重い障害って、脳の機能の問題だったり、出産時の事故だったりが多いから

産んでみるまで予想もつかない。

母親の年齢もあんまり関係ないし。

 えーっと、出生前診断を受けられたのでしょうか。うちは受けてない。出生前診断でわかるのは遺伝疾患。13,18,23トリソミーの3種のみ。23トリソミーは広く知られているダウン症。13トリソミーは以前は大半が死産していた病気だけで、最近は生後1年位は生きられるようになった病気。18トリソミーも死産率も多く予後は不良。

 で、これら遺伝疾患は高齢出産のリスクが証明されているので、出産希望女性は適齢期で出産するに越したことはないとボクは思っている。

 あとは外見上の奇形もエコーでわかるのかな。あ、いや、出生前診断(堕胎可能な期間)ではわからないな…。

 その他の障害は出産するまでわからない。いや、広汎性発達障害とかなら出産してからもしばらくわからない。軽度だったり、無知な年寄り医師が担当すれば3歳時検診もパスしちゃうしね。

子どもを持つリスク

子供を持つのって待機児童の心配とかもあるけど、

こういう思わぬリスクもあるんだなって、産んでから初めて知った。

誰だって障害児を産む可能性はあるんだから、

せめて、どんな子が生まれても普通に生活を続けていける社会になって欲しいと切に願う。

 障害児が生まれるリスクについて出産して初めて知ったとするなら、少し勉強不足だと思う。学生時代、妊娠前、妊娠中と女性には出産にまつわる知識を得る機会は沢山ある。

 障害児を産むリスクについて出産後初めて知ったとしたら、それを得て来なかった著者の責任だろう。誰だって産む可能性がある。その通り。遺伝性疾患については高齢出産がリスクと言われているが、後は喫煙とか飲酒か。それらリスクを回避していたとしても障害児を出産する可能性はある。

 だけどね。障害児出産ってリスクなのかな…。ボクも産んだことがないから分からないけど、ボクが関わってきたお母さん方は決して我が子をリスクと捉えていなかったと思うんだけどな…。

当該記事の反響について

 当該ブログ記事は2回追記がされている。それが以下の通り。

国や市町村の障害児施策について

3月7日21時追記分

医療ケアのある重度障害児育てていると、困ったことがあってもデモとかで訴える余裕もないし(そもそも物理的にあんまり外出できないし)、どうしたって自分たちが少数派だからと、伝えることを諦めがちになっていた。

 障害児育児は健常児育児に比べて大変なことは多々ある。これは紛れも無い事実。ただ、健常児育児に比べ、障害児育児は比べものにならない程度の支援が受けられる。

 だからデモとかありえない。

 少数派の障害児のために子ども支援のための予算がどれくらい割かれているか知ったら健常児の母親は発狂するレベルじゃないかな。

 育児の国や市町村からの支援レベルで言ったらかなり恵まれていることはだけは事実だ。

子どもを授かる覚悟について

今、恋をしたり、結婚式をあげたり、妊娠を喜んでいるカップルや夫婦がいつか重症児の親になってしまった時、もう少し絶望しないですむよう社会が変わっていくといいな。

 もし今恋をしたり、結婚式をあげている人がいるなら、妊娠したら(いや、出産希望者なら今から)タバコと酒はやめて、高齢出産はしないようにした方がいいでしょう。障害児を生まないためにできることをやった方がいい。

 そして、障害児を出産する可能性があることもちゃんと知っておくべき。出産後に考えるから絶望するのだ。そのリスクがあることは知っておくべきだし、その覚悟を持って出産すべき。もっと言うなら避妊せずにセックスするならその覚悟を持てって話。

延命?って出産において使う言葉なのか?

私のケースだと、出産後に異変がわかって、あれよあれよという間に呼吸器がついて経管栄養がついて、延命について考える機会もなかった。

「命は助かりました。医療ケアがあれば生きて行けます。あとは親御さんが頑張って育ててください」っていう感じで怒涛の育児が始まったw

延命はするにしても、しないにしても重い決断だけど、発達が望めないような障害の場合選択の機会はあってもいいんじゃないかと思う。

そして、親が考え抜いて決めた答ならどっちも正解だと思う。

(ただし、どの程度の発達が望めるかの判断が難しいケースも多いけれど)

どんな命でも大切に育てるというのはひとつの理想なのかもしれないけど、現実を見れば、介護の担い手も福祉のリソースもすべて有限だから。

 えーっと、延命っていう概念は出産後の子どもには当てはまらないんじゃないかなって思う。

 延命は、『高齢者』において、呼吸器等々使用しなければ長くないけどこれ以上、積極的な『治療』を望みますか?ってところでの概念なんじゃないかな?つまり、病気じゃなくても亡くなってもおかしくないような年齢、状態の時に使われる言葉じゃない?

 脳死判定がない限り、植物状態でも医療的ケアを意図的に止めたら殺人だと思うよ。尊厳死にも当たらないし。

 出産は健常児でも障害児でもリスクは高い。だから健常児でも呼吸器つけられるし保育器にも入る。(これは子どもの尊い命を守るために当然の処置でしょ。)

 出産は生まれてくる命を絶やさぬようにする一連の流れでしょ?健常児の赤ちゃんも放置したら死にますから…。生まれてきた時点で元気に落ち着かせることが産婦人科医や助産師、看護師の仕事なわけ。

 生まれてきたばかりの赤ちゃんを治療するわけじゃない。生きるために必然の処置をするだけ。もし積極的な治療(緊急手術とか)する場合は絶対に親の同意をとるはずよ?仮に出産直後でもね。その場合は『同意しない』という決断も許される。手術で助かるかどうかなんてやってみなけりゃ分かんないのが実際だから。お金もかかるんだろうしね。

 でも、呼吸器等々つければ生きられる赤ちゃんは将来がある。高齢者とはそこが違う。延命云々は子どもには基本的には使わないんじゃないかな。

死ぬな!生きて!

まあ、子を育てていくうちに考え方は変わるのかもしれないけど。

あと、経験者の声には勇気づけられた。ありがとう。

http://anond.hatelabo.jp/20160229202916

とりあえず、もうちょっと生きてみようと思います。

 これだけは言える。絶対生きてください。施設入所など最近では難しくなっているので育児から逃れるのは難しいでしょう。健常児に比べて大変な育児になると思う。

 でも健常児同様小学校に入学してくれれば少し楽になる。小学校入学から高校卒業までの12年間はお母さんの時間も少しばかり作れる。

 あとは旦那様との協力体制をしっかり築いてしっかりとお子様を育児していって欲しい。確かに小児の在宅医療はまだまだ発展すべきだ。しかし、それは制度の問題じゃなくて担い手が少ないって問題。

 ボクは今その問題を解決しようと取り組んでいる。このようなブログが書かれない世の中を作って行こうと思うので見守ってください。

追記分より障害児支援のリンク先

3月8日0時追記分

コメントして頂いたチャリティーのリンク先を貼っておきます。

すでに寄付してくださった方もいるみたいで、感謝の思いで爆発しそうです。

障害児保育問題@フローレンス http://florence.or.jp/solution/#col_3

重病児家族滞在施設@マクドナルドハウス http://www.dmhcj.or.jp/support/index.html

 社会は少しずつだけど動き始めている。ボクもこの動きを大きなムーブメントに変えるべきこれからの人生を費やしていきたいと本気で思っている。

 ので、応援よろしくです。

おわりに

 ちょっと辛口?なコメント・アドバイスもあるかもしれないが、それは仕方ない。

 だって子どもを授かるってそういうことだから。

 このブログの想定読者である理学・作業療法士もお子様がいらっしゃる方であれば、ボクの意見にご賛同頂けるんじゃないかな?

 子どもを授かるのはリスク。だけど、子孫の繁栄が生物の宿命。近代人は頭が良くなってリスク回避思考が強いけど、リスクを如何に予防するか、リスクに対して如何に立ち向かうか?という思考を巡らせれば何とかなるはず。

 だってボクが知っている障害児のお母さん方は何とかされているから。

 でも、大変だからボクは少しでもその負担を軽減するお手伝いをしてお金を稼がせてもらうの。

 ちなみに、訪問看護は大阪市の特例の子どもの病院受診500円/回、1500円まで/月の対象外だけど、小児慢性特定疾患治療研究事業や重症時訪問看護支援の制度でかなりお安く受けられるようになっている。

 そう、つまりかなり援助の手は厚いのだ。

 まずは支援者側がそういう事実を知り、このブログの著者のようなお母さんたちにしっかりと情報発信できるようにすることが大事だとこのエントリーを読んで思った。

 ってことで、今日はここまで。ほな、また。

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