こんにちは。作業療法士の中野です。
ボクは実習中に急性期、回復期を経験したのみで、臨床に出てから一度も経験したことがない。
なので、急性期・回復期をリアルで経験されている療法士さんは、世間知らずな理想論者だと思ってこの内容を読んで欲しい。
ただ、一理ある内容だと思うので、何かしら活かして頂ければ幸いだ。
というのも、いわゆる維持期、生活期と呼ばれるところで片麻痺クライアントと関わると、非麻痺側に問題があるケースが多い。うーん、多いってかほぼ全員だね。
今回は、その非麻痺側の障害への治療の必要性と、非麻痺側への障害の予防についてお伝えしたい。
非麻痺側の障害の成り立ち
回復期も退院間際になると、非麻痺側の障害がより顕著になるケースが多いと思う。
入院当初・発症当初から関わっていると、非麻痺側の問題がより大きくなっていっている事に気付くはずだ。
理由は簡単。非麻痺側の障害とは、『非麻痺側の異常使用の学習』によってもたらされるからだ。例えば、代償運動。代償運動を学習した結果、その運動が別の運動遂行に大きな弊害となってしまうのだ。
学習は、繰り返しにより強化され、より強く記憶されていくので、非麻痺側の異常使用を覚え、強化していくから、発症当初よりも退院前の方がより顕著に見られるはずなのだ。
そして、これはつまり、療法士によって作られたものだと言わざるをえない。
療法士が例えばADLの能力を追い求めるあまり非麻痺側に障害を作っていくのである。
これに対してボク達は真剣に向き合う必要があるだろう。
能力を求められ、追い求めたが為に能力が低下するというパラドックス
急性期・回復期で求められる能力は、起居動作、セルフケア動作だろう。もちろん、それ以外のケースもあるかもしれないが、大半がそうだと思う。
当然だ、退院後の生活をしっかりと見据え、より介助量が少なく、不便なく生活してもらう為には必要な能力だから仕方がない。
しかし、早期からそれら能力を求めると(この場合、麻痺の回復を待たずにという意味での早期)、往々にして代償運動が起こる。
麻痺側の機能が、その動作を遂行するのに追いついていないからだ。
麻痺側から「ちょと待って、ちょっと待って、お兄さん!まだ早いまだ早い、焦らないで!!」という悲痛な叫びが聞こえてきそうだ。
だが、国の意向も家族や本人の意向もADLレベルの向上だから仕方ない。麻痺側の訴えを無視せざるを得ないのだ。
こうやって非麻痺側にも障害が作られた状態で退院し、その後セルフケア以外の動作遂行を求めていった時に非麻痺側の問題が影響を与えてしまうのである。
非麻痺側への治療の必要性
これらの理由で非麻痺側にも障害が作られる。
そして、それらはある程度仕方のないことなのだが、新たな能力を求める際や二次障害を予防する為にも、非麻痺側の治療が必要になる。
これはつまり二度手間であるが、上のようなパラドックスが存在する以上仕方ない。
だとしたら、急性・回復期の理学・作業療法士に求められるのは非麻痺側に障害が出ないようにする『予防的観点』ではないだろうか。
非麻痺側の障害予防
維持期・生活期のリハに関わる療法士としては、急性期・維持期に極力非麻痺側に障害が出ないように配慮して欲しいって思うよね。
これ、マジで思う。
ボクがそういう立場だった時も、あ〜、この人も療法士のせいでQOL下がってる…ってケースがいくつもあった。
でも、仕方ない。急性期や回復期は、より歩けるように、より介助量が少ないようにが大切なポイントだからだ。
診療報酬改正においても、回復期リハのアウトカム設定がされて、リハ量が制限され始めた。今日(2016.4.4)の日経新聞にもその手の記事が掲載された。
だから、能力アップに走るのは仕方ない。
だけどね、非麻痺側の障害予防の為にできることは麻痺側の機能に拘る事しか無い。
最近さ、活動と参加へ着目することが注目されてるよね。
もちろん、これは『理学・作業療法士は参加を目標にして機能面へもアプローチすべし』で書いたようにめっちゃ大事なこと。でも、それは目標設定レベルでの話。
リアルな治療現場においてはキレイ事にしか過ぎないのだ。
療法士はもっと麻痺側の機能に拘って、それを治療する過程において活動や参加のレベルを上げていく必要がある。
結果そのことが非麻痺側の障害予防に繋がるばかりか、活動や参加のレベルを上げてくれることに違いない。
だからね、療法士はもっと機能面にこだわらないとダメだよね−。
まとめ
ボクは今回の発言が時代に逆行しているとは全く思わない。
ってより、時代に即していると思う。でも、発症後3ヶ月までには脳的に回復するのは限界があるだろう。
でも、その中でも極力機能にこだわっていくことが、最終的にクライアントのQOL向上に役立つと思うんだよね。
急性期・回復期で働く療法士には、この点に拘れとは思わないが、ご留意頂ければ、その後関わる療法士には喜ばれると思うよ。笑
その辺どうか、よろしくっす。ってことで、ほな、また。