医療・介護・福祉

理学・作業療法臨床実習に関する質問主意書と答弁書について

 こんにちは。作業療法士の中野です。

 皆さんはご存知だろうか。

 今国会において、民主党の阿部衆議院議員から『理学療法士・作業療法士の臨床実習に関する質問主意書』が提出されている事を。

 SNSなどでは結構拡散されていたからご存知の方も多いと思う。

 で、今回はその内容を簡単に紹介し、それについての意見を書きたいと思う。

 ちなみに、国会の質問主意書や答弁書は昔ながらの書き方?っていうのかな。何か読みづらいけど、原文も一応チェックしておくと良いかもね。

参考:理学療法士・作業療法士の臨床実習に関する質問主意書

質問の内容と答弁の内容

 阿部衆議院議員からの質問は大きく3つに分けられている。

  1. 無資格診療の疑いについて
  2. 臨床実習の実態について
  3. 養成施設について

 それぞれ複数の質問が提出されており、合計9つの質問がされているので、以下に紹介する。

無資格診療の疑いについて

 原文をそのまま引用するとかなり読みにくいのでざっくりボクの言葉に直して紹介させて頂く。

  1. 学生による患者への治療は無資格診療に当たらないか?
  2. 学生の治療に診療報酬を請求している件について政府の見解は?

 政府からの答弁は以下の通り。

  1. 医師や看護師の実習に関する法律に準じて違法性はないと考えている。
  2. 個別で判断される内容であるために一概に回答できないが、正当な形での指導の元であり、患者が同意していれば問題ない

 阿部衆議院議員は、恐らく無資格診療であることを問題視しているというよりは、そのことをベースに今の臨床実習のあり方について政府が見直すきっかけになれば?と思っての質問だったと思う。しかし、その内容では現状問題視することはないといった回答だ。

 だからといって、政府の見解が間違っているとは思わない。正当な答えだと思う。無資格診療だなんて言われたら学生はどうやって勉強すんねんって話になる。

 診療報酬請求については正に個別で判断される内容だろう。学生指導の後、療法士がしっかり治療していれば問題ない。あるいは療法士が手取り足取り治療の補助をしていたら問題ない。だけど、放置プレイでさせた治療について診療報酬を請求していたとしたらいくら患者の同意があっても、それは詐欺だろうとボクは思う。

臨床実習の実態について

 臨床実習の実態についての質問は以下の3つだ。

  1. 臨床実習は大きなウエイトを占める項目にも関わらず実習内容が標準化されていない。医師・看護師の実習は標準化されてきているが、理学・作業療法士に対する実習に対する指針を厚生労働省は作っているのか?
  2. 臨床実習指導者の要件とは?指導研修はあるのか?
  3. 養成校が増え、実習地確保が難しくなり、養成校と実習地が対等な関係でいられなくなってきている。そんな中実習指導中のパワハラやセクハラなどの問題が常態化していたり、自殺者も出ている現状を政府は把握しているのか?その実態を調査する必要があると思うが政府はどのような見解か?

 答弁は以下の通り。

  1. 理学療法士作業療法士学校養成施設指定規則の「理学療法士作業療法士養成施設指導ガイドライン」で具体的な内容を明確にしているところだが、医師・看護師の臨床実習指針に当たるようなものはまだない。
  2. 先のガイドラインにて、学生を対応する指導者の内、最低一人は3年以上の臨床経験と定めているが、指導の質を確保するために厚労省と医療研修推進財団で毎年養成施設教員等講習会を開催しているところである。
  3. 実態の詳細については把握していない。臨床実習が適切に行われていない現状について各協会から聞いているので、今後理学療法士等学校養成施設の『養成カリキュラム全体の見直し』を行う中で検討していきたい。

 まず、自殺者が出て、訴訟騒ぎにもなっている実態さえも把握してなかったことには驚きだが、これは政府の問題ってよりも現場の問題が大きいと思う。国が介入するってより、学校や協会が意見を上げて認めてもらうって形式がスマートだろう。

 指導規則って見たことある?リンク先飛んでもらったら分かるけど、見にくい。読む気失せる。ここから臨床実習に関する項目をわざわざ指導者は読まないでしょうよ。バイザー会議の時などに学校が指導者に配布する場合もあるようだけど、徹底はされてないみたいだね。

 こういう細かいところを徹底するだけでも悲惨な事件や不適切な実習にはならないと思うんだけどなぁ。

 あと、講習会ってこれのことだけど、期間長い。ボクも出席しようかと思って詳細見たら驚きだった。ってか、ボクは出席しようと思ったけどこんな研修に出席しようと思う療法士っていったいどれだけ居るか分かったもんじゃない。

 だから、政府にお願いしたり、他機関にお願いしたりするんじゃなくて、自分達でこの問題に取り組んでいくべきだろうね。

 クリニカルクラークシップなんて言葉が出てきているけど、皆がしっかり臨床実習のあり方に問題意識を持って取り組めば対応出来る問題なんじゃないかなぁと。

養成施設について

 養成施設についての質問は以下の4つだ。

  1. 養成校の急増に伴い、学力の質が下がっているのではないか。過去20年の養成校数の推移を明らかにし、養成校数と学力の質についての政府の見解を聞きたい。
  2. 教員の要件として、臨床経験5年以上というのは妥当か?
  3. 一部養成校では教員が足りないなどの問題があり、注意も無視するなどの状態だが、それに対して立ち入り調査などはしないのか?
  4. 一部養成校ではストレートで卒業する学生が入学した半数程度などにも関わらずその事実は公表せず国家試験合格率(合格者数/受験者数)などのデータだけで宣伝しているが問題ないのか?

 答弁は以下の通り。

  1. 養成校数は平成17年度より把握している。この養成校数と学力の質については把握していない。しかし関係団体からは学生教育の内容見直しについて要望を受けているので、先程答えた『養成カリキュラム全体の見直し』の一貫として取り組みたい。
  2. 指定規則では5年以上と定めているが、こちらも関係団体より教員の質の向上の為、教員の基準を見直す要望を受けているので『養成カリキュラム全体の見直し』の中で行いたい。
  3. 違反については法に基づき、指定を取り消すことが可能なので立入検査などは必要ないと考える
  4. 大学においても、専門学校においても適切に評価し情報提供される仕組みはあるので、政府としてはこの仕組が適切に運用されているか注視し、『養成校カリキュラム全体の見直し』の中でも検討していきたい。

 臨床実習の実態についての質問より引き続き、合計4回も『養成校カリキュラム全体の見直し』という言葉が回答に使われている。

 つまり、今後あるだろう養成校カリキュラム全体の見直しの内容によって臨床実習の内容や、養成校で学ぶ内容、臨床実習指導者や教員の質についてキチっと標準化されるということだろう。

 ただ、期限が切られていないのでいつ作られるかは全く不明。これが作られるまでに実習いじめを放置しても良いのだろうか?不正な養成校を放置しても良いのだろうか?ボクとしては期限を切って、それまでの暫定措置まで示してほしいなぁと思えるような内容だ。

 臨床実習に関して問題意識を持つ療法士は増えてきているとは言え、まだまだ少数派だろう。学校も臨床も協力して後輩の育成に取り組んで欲しいと思う。これらの問題で迷惑を被るのは学生であり、クライアントなのだから。

民主党阿部衆議院議員ってだれ?

 ところで、今回質問を提出した民主党の阿部衆議院議員ってどんな人なんだろう。

 阿部衆議院議員のWebサイトで見てみると、小児科医で、6回当選の中々のベテラン議員さんだった。毎回精力的に質問などされているので真面目な方なんだろうなぁとは思う。

 理学療法士の国会議員として活動されている山口参議院議員とは面識はなさそうなんだけど、どうして阿部衆議院議員はこの問題に取り組んだんだろう。

 で、ボクが質問者なら今回のこの回答では全く満足できないんだけど、この問題について食い下がるんかなぁ。ただの点数稼ぎなんかなぁ。

 その辺も含めて今後の動向を見守っていきたい。

追記…再質問主意書が出され、その答弁が出たよ

 感想を一言でいうと、この議員さんには全く期待できず、何も変わることはないだろう…ということだけだった。

参考エントリー:理学・作業療法実習に関する再質問と答弁を確認しての感想

まとめ

 阿部衆議院議員がどういうつもりで今回の質問を行ったか?についてはわからないが(Webサイトから質問してみるから返事が来たら紹介するね。)、臨床実習や理学・作業療法士教育に関しての問題が国会でも取りざたされるような状況にあることは間違いない。

 今回の質問があったから何かがすぐ変わるってことは無いが、業界が過渡期にあることに違いはない。

 今後、色んな部分で大きな変化があるだろう。

 ボク達はその動きを見逃さず、しっかり情報収集と対策に勤しむべきだろう。

 ってこで、今日はここまで。ほな、また。

国会議員の仕事―職業としての政治 (中公新書)

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