評価と治療

筋緊張亢進(痙性)に対し理学・作業療法士ができる事とは?

 こんにちは。作業療法士の中野です。

 人のQOLを著しく下げる病気の一つが脳血管障害だろう。

 理学・作業療法士であればその実態はよくご存知かと思う。

 で、脳血管障害のクライアントと向き合う上で切っても切れないのが筋緊張との関係だ。ほんと腐れ縁だよね。

 しかし、ボク達はクライアントの抱える筋緊張の問題を無視してリハを続けることはできないし、必ず何かしらの影響をおよぼす。

 今回はそんな筋緊張の問題、特に筋緊張が亢進している痙性という状態に対してボク達ができることに関してシェアしたいと思う。

※別エントリー更新。痙性に対してアプローチする目的というか、考え方について書いたので合わせて読んでみてほしい。

参考エントリー:理学・作業療法士の痙性に対するアプローチにおける考え方

過剰な筋緊張がリハによってもたらされている可能性を理解する

 痙性に対して取り組むというのは、麻痺した四肢の機能を今以上に良いにしたい、使える手足に戻したいという目的をもって取り組まれるだろう。

 つまり、痙性をリハによって何かしらの問題解決を狙うということだ。

 しかし、そのリハがクライアントの痙性を強めている可能性があることもある。

参考エントリー:脳卒中後の急性期理学療法・作業療法の役割と課題について

 理学・作業療法士として脳血管障害のクライアントに対してリハを行う時は自らが痙性を強める原因にならないよう細心の注意を払う必要があることをまず知っておいて欲しい。

脳血管障害の痙性に対するアプローチ

 脳血管障害であれば通常右か左かの半身に麻痺が出る。で、その範囲の筋緊張に異常が現れる。

 それは大脳皮質が制御している脊髄レベルの運動が制御できなくなるからだ。

 つまり、痙性に対してリハを行うというのは大脳皮質の働きを取り戻すということに等しい。ちなみに大脳皮質の働きを取り戻すというのは、アタックを受けた部分を治すって意味じゃなくて別の経路を作らせるって事。

 で、その為に何ができるか。

 まず最初にすべきは頭部のコントロールである。

 毎日のように片麻痺者と関わっていると当たり前になってしまって、見落としがちだが、片麻痺のクライアントの頭は基本的に傾いている。解剖学的に正しい位置にない場合が多い。

 頭部の位置がコントロールできるようになるまで、四肢をコントロールすることはできない。

 これは人間発達的に考えても当然で、人は定頸することで運動の幅を広げていくことができるのだ。

 まずは背臥位で、そして側臥位から腹臥位での頭部コントロールができるようになることが痙性に取り組む上での第1歩だ。

 そして、次。四肢に対しては『筋の伸長』と『圧縮』が効果的だと言われている。

 これらはつまり、四肢から神経を通じて正しい情報を脳に伝えるという行為だ。足底接地や、手掌で支持するってことの意味はそれに当たる。

 こういうテクニックを用いて、高くなった筋緊張に取り組むわけだ。

パターンを抑制するポジショニングが大事

 痙性のある四肢、いわゆる麻痺側に対してアプローチするということは何かしら目的があるだろう。回復の見込みがない場合(ま、そんなケースはないのだけれど)は利き手交換だったり、非麻痺側での作業遂行能力向上を優先して行うだろう。

 痙性、つまり麻痺側に対してアプローチを行うというのは、何かしらその麻痺側が実用的なものになってもらうことが目的だ。

 で、その目的を遂行する為には上肢の場合は手指が動くことだったり、プレーシング動作の獲得だったりが必要になる。下肢だったら、股関節の安定性だったり、各筋の協調した運動だったりが必要になる。

 で、そういう事を獲得しようとした場合、リハを行う過程でのポジショニングが非常に重要なのである。

 使うテクニックというのは筋の伸長と圧縮なのだけど、それらを効果的に用いる為にはポジショニングが重要だ。

 例えば麻痺側の肩甲帯はリトラクションしやすいわけだから、プロトラクションした位置で支持するという練習が必要になる。手指は前腕が回外しないと開かない。開かない手指は使えないわけでボク達はその手指が開くようにアプローチしなければいけないわけだけど、その為には前腕が回外する必要があり、その為肩関節は『伸展・内転・外旋』方向にある方が良い。

 このような事を理解して取り組むと、より効果的にリハ効果を得られるだろう。

まとめ

 あなたはクライアントの痙性を強めてはいないだろうか。

 あなたは麻痺側へのアプローチを諦めていないだろうか。

 今、参加している研修で発症後9年経過している脳梗塞後遺症の患者様がご協力して下さっている。その方はベーシックコース参加時(半年前)にもご協力下さっていた方でボクはその方を覚えている。

 で、6ヶ月前から『麻痺側で受話器を持ち、非麻痺側でメモをとる』という課題に継続して取り組まれていた。

 あ、一緒なんや…って思ったがビックリ。その内容は見違えるほど変わっていた。つまり、発症後9年を経過している方でも、たった半年で見違えるほど麻痺側が変化することがありうるのだ。

 これは理学・作業療法士にとってもクライアントにとっても朗報ではないだろうか。

 病院ではクライアントの限られた期間のお付き合いとなり、その後の人生は知る由もない。しかし、地域ではずっと関われる可能性がある。

 その時に痙性という問題を諦めずに取り組めるか、諦めるかは理学・作業療法士次第である。

 だからボク達は『取り組むか、取り組まないか』という判断を改善の可能性は十分にあるという認識の上で行わなくてはいけないだろう。

 もちろん、電話を受けながらメモを取りたければ、イヤホンマイクを使うなどの代替方法があるにはあるし、そちらの方が実用的かもしれない。

 だが、クライアントの心ってのは実用的かどうかで決まるもんじゃあない。実用的でなくてもできるようになりたいことだったり、やりたいやり方ってのがあるものなのだ。

 それを無下にする必要はない。実用的でないことや、困難が予想されることを承知の上でも麻痺側へのアプローチを望まれるのであればそれも良いだろう。

 鼻から取り組まない、諦めるという姿勢は改めて、改善の余地があることを知り、適切に痙性に対してアプローチされることをボクは強く望む。

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