評価と治療

理学・作業療法士はもっと患者の「いい部分」を評価すべきだ

 このブログの読者の年齢層は分からないが恐らくネットで何かしらの答えを求めようとしている世代は若い層が多いのではないだろうか。

 療法士業界は日本の年齢別人口分布と違ってピラミッド形を呈している。

 だから、きっとこのブログの読者に若い層が多いのも間違いではないだろう。

 さて、その若い層のセラピストは恐らく養成校に入った頃からICFに慣れ親しんでいるので、クライアントのいい部分(今は残存能力とか健側とか言わないと思うのでこのような表記で良いかな?)を評価することに慣れているだろう。

 しかし、それでも実習や臨床に出るとどうしても悪い部分に目が行きがちになるのではないかと思う。ICIDHを学んだ世代となるとそれは尚更なのではないかと考える。

 そこで今回はクライアントのいい部分を評価する視点と方法について書きたいと思う。

いい部分の評価とは何か?

 最近では残存能力とか、健側という言い方をしないのは、いい部分=残存能力だけではないからだろう。健側という言い方をしなくなったのは非麻痺側が健常だと言えないからだったが…。

 ボクは健常者をクライアントとして、病気や障害を「予防」することを目的に仕事をしている。

 つまり、「悪い部分を治す」という考え方ではなく、「悪くなりそうな部分」を良くし、「いい部分」を更に良くするという考え方である。

 だから、多くのセラピストよりも「いい部分」を見ている自負がある。

 そこで、ボクの捉える「いい部分」について定義してみたいと思う。

 クライアントの持つ「いい部分」とは、心身の状態や運動のパフォーマンスを向上させるために「使える部分」である。

 例えば痛みのある部分があったとしても使える程度の痛みで、心身の状態や運動のパフォーマンスを向上させるために使える部分だとしたら、ボクはいい部分として捉える。

 片麻痺のクライアントでも、麻痺側が使えるなら「いい部分」だろう。

 臨床において言い換えるなら、クライアントの目的のために使えるなら麻痺側もいい部分になるし、そのいい部分のパフォーマンス向上の為に何かしらのアプローチをするのは極めて効果的だと言えるだろう。

 逆に「悪い部分」とは何だろうか。それはクライアントの目的のために使えない、あるいは(限られた期間において)使うのが極めて困難な部分だと言える。また、クライアントの目的を邪魔する部分とも言えるだろう。

 このように定義しなおすと、理学療法・作業療法の目的に「悪い部分の改善」とするのはナンセンスだということが分かるだろう。しかし、悪い部分に対してアプローチしないわけではない。何故ならクライアントの目標達成を邪魔する可能性があるからだ。

 悪い部分に関しては改善ではなく、対処を行う場合が多いだろう。福祉機器などがその1つだと思う。歩く機能が悪い部分であるクライアントには歩く事を改善するのではなく、車椅子などの補装具を使う方が目標達成には効率的だ。

 この例は悪い部分への対処するアプローチだと言える。

ICFはいい部分を評価するために作られている

 ICIDHは国際障害分類であり、「障害(Impairment,Disability,Handicap)」を評価するために作られている。

 だから、悪い部分が何で、それがどのような困難をもたらしているかを評価するものだ。

 ICFは、クライアントの健康な状態(well being)とは何か?という問いから作られている。そして、ボク達はクライアントの健康な状態を獲得するためにどのようないい部分を使って獲得させるか、あるいはどのような悪い部分に対して対処するかを評価しなければいけないのだ。

 ICIDHにおいて、悪い部分は改善すべきことだったが、ICFにおいて悪い部分は対処すべきことと捉えることができるようになった。

 ボク達はその考えに則ってクライアントを評価、治療すべきなのである。

まとめ

 いい部分を評価しなければいけない。全体像を評価しなければいけない。

 多くのセラピストは言葉では知っているだろう。しかし、実際に現場でその思考・実践ができているセラピストは一体どれくらいなのだろう。

 ボクは極めて少ないんじゃないかと思っている。

 ボク達はICFという極めて全体像を捉えるのに適した考え方を持っている。

 しかし、導入されて10年以上が経過した今もまだICIDH的考え方が蔓延しているのではないだろうか。

 10年という月日は長いようで短いものだが、10年一昔というように、過去の産物に囚われていてもいけない。

 ボク達はICFに則ってクライアントのいい部分をしっかり評価し、クライアントの目標達成を促進させるべきなのだ。

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