評価と治療
thumbnail

「脳卒中後の歩行訓練には機能的電気刺激が有効」は興味深い

 本日、気になるニュースが流れてきた。

 『脳卒中後の歩行訓練には機能的電気刺激が有効 384人を対象に歩行訓練を実施』である。

 これは日本のサイトが海外の論文を翻訳・編集したものである。

 元ネタはこれ。(参考文献:Long-Term Follow-up to a Randomized Controlled Trial Comparing Peroneal Nerve Functional Electrical Stimulation to an Ankle Foot Orthosis for Patients With Chronic Stroke.

 概要は、下垂足となっている麻痺側伸筋群に対してコンピューターで制御された電気刺激を与えることにより、歩行速度に改善が見られたというものである。

 ボクはこのニュースを非常に興味深い内容だと思って眺めていた。

 今回は、このニュースを受け、何がどう興味深いかをシェアしたいと思う。

電気刺激でも運動学習が起こる?

 現在、下垂足に対する根本的な解決法はない。AFO(短下肢装具)を利用することにより、足底接地ができるよう促しているが、これは別に根本解決手段ではなく、装具利用により、無理やり足部を背屈させているだけにすぎない。

 もちろん、AFO利用により背屈制限がひどくならないように予防することだったり、足底接地を促し、ROMを改善させるという意味合いにおいては治療効果もある。しかし、AFOを取ればやはり下垂足のままである。

 多くの脳卒中患者はそれを理解しているから歩行時には必ずAFOを着用するし、認知症を合併しているケースにおいては着用し忘れて転倒するというケースもある。

 しかし、今回のケースは根本治療も可能であるという事を示唆している。

 この記述だけでは確実なことは言えないが、恐らくこの電気刺激は静止時に与えられているものだと思う。

 伸筋群に電気刺激を与え、伸筋群の活動を促しているのだ。そして、それが歩行時(電気刺激がない状態)にも活動しているということだとするならば、電気刺激による運動学習が起こっているということになる。

 これはとてつもなくすごい事だ。

 昔、電気刺激で腹筋を割る的な装置が流行ったことがあった。

 ↑こんなやつだ。で、これが流行った時、見せかけの筋肉を作るだけ、とか意味ない的な噂が流れていた。

 今回の研究はそれを覆すのだ。もちろん、このような装置はファンクショナルな筋肉に直接刺激を与えるものではないかもしれない。

 だが、例えば、筋肉1つ1つにアプローチできるように改良すれば麻痺側の腹筋・背筋両群に刺激を与えれば同時収縮がう流せるかもしれないし、中殿筋に刺激を与えれば歩行が改善するかもしれない。

 膝の屈筋・伸筋両群に刺激を与えれば膝の協調性が増すかもしれない。

 前出のサイトにも、今後別の治療への応用が示唆されているが、電気刺激で運動学習ができるのであればその可能性は大いにあると思う。

何故今まで無かったのか?

 技術的には難しいことではないし、歩行を改善する為に必要な筋収縮も最近になって分かったわけではない。

 何故、今まで無かったのだろうか。

 腹筋に刺激を与える機械の時のように、試しもせず意味が無いと考える研究者が多かったのだろうか。

 しかし、誰もが思いつきそうなことを実際にやってみることの大切さがこの研究を通じて教えられた気がする。

理学療法士・作業療法士が使えるのかな…?

 仮にこの治療法で運動学習が効率的にできるとなったとしよう。

 この治療法は誰が行うのだろうか…。

 理学療法士か?作業療法士か?それとも医師か…?

 仮に実用化したとしよう。様々なリハビリテーションに応用できることが証明され、安全性も担保されたとしたら、恐らく医師が行うことはないだろう。

 では、療法士が行うか?

 いや、高い給料を出して、誰にでもできることを有資格者にさせるだろうか?

 電気刺激士なんてわけのわからん資格ができてしまうかもしれない。笑 いや、安全性が担保されれば医師に指導された通り、患者が自ら行うかもしれない。

 まだまだ先の話で、実際問題どうなるかはわからないが、ロボットに応用されないと言われる作業療法士はともかく、理学療法士には危機的状況かもしれない。(参考エントリー:作業療法士はロボットに取って代わられる仕事ではないが、淘汰される職種だと思うよ

 療法士の存続が危ぶまれる研究だと、ほんの少しだけ危機を感じた。

まとめ

 この治療法が実用化されたとしても、現状上げている程度の効果であればボク達の職がなくなることはないだろう。

 しかし、もっと発展するかもしれないし、もっと応用されるかもしれない。

 いや、今後もっと革新的なイノベーションが起こるかもしれない。

 ボク達は自分たちの専門性を高め、この研究に負けないような効果を証明していく必要があると更に思ったニュースだった。

 療法士諸君も、このニュースにほんの少しだけでも危機感をもって、今後の研究活動に積極的になって頂ければと思う。

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

最新情報をお届けします